まったく気が付きませんでしたが、雑誌を見ていたら「エステー化学」が組織を変えたとあります。よく見たら、なんと、会長の姪っ子さんが社長に就任することになっていました。これにはびっくりしました。普通は家族というのは中小の家族経営会社ならば普通に取締役が継承されるのですが、上場企業で、前任の米田さんという方がわずか1年で退任して、家族の一員が社長に任命されたのです。もともと私はエステー化学の製品が好きで、かつて妻が「このゴム手袋丈夫だわ」とびっくりして教えてくれたことがあります。台所で使うゴム手袋は大体粗悪品が多くて、2-3回使うとすぐに破れてしまうものだそうです。数百円のものだけにそれでも当然と主婦の方たちは思っているのでしょう。ですから何回も使える丈夫なゴム手袋を見つけて妻が感激したらしいのです。

後日IR大会でエステーの社員に確かめたところ、それは二重に編んであるからですよ、と自信ありげに話していたことがあります。つまりエステーの製品は良心的な作りなんですね。ところで、この人事がなんとなく腑に落ちないので過去の業績を振り返ってみました。そうしたら、私が得た好印象の製品にもかかわらず、売り上げ、利益ともに伸びるどころか最近までシュリンクしているではありませんか。

とすると、この社長人事は米田さんが責任を負わされて退任させられて、新鮮な求心力のある、また成長に向けて舵を取れる姪の貴子さんという人材を登用したということになります。むろん優秀な方でしょうから、なんらの疑問もありません。しかし、ワンマン鈴木会長はそのまま社長の上に会長で載っていて、これまでの形と変わっていないのです。変わったのは営業部門とか国際部門とかのラインが変わったようなのです。これが改革だとすると、社外取締役はどのように評価しているのでしょうか、知りたいものです。

私は思うに、エステーの事業は 1)消臭剤とか防虫剤の業界はもともと利益率の低い業界で、傘下のフマキラーも低収益、2)経営力が弱く収益が出ない、といった運命にあるのかもしれない、ですので私的には過去の販売管理費を調べてみたのですが、この5年間の販管費は36%台で改善はされていません。しかし私はそれが問題ということを言っているわけではなく、むしろ広告宣伝費がこういう家庭用品では決定的に大事だと思っています。

私が驚いたのは、鈴木会長はいろいろ常識はずれの、ユニークな経営論お話ししたりして人気になり、メデイアの露出が多いのですが、その独特の話がエステー化学の経営には生かされていないらしいということ、危機を突破するにあたって身内の中の身内をCEOに採用したこと、なのです。