アメリカは、アメリカンファーストの原理を提唱してから、予想した通り、ついに為替まで言及を始めた。先日 ムニューイン米財務長官は、「二国間貿易交渉の中に為替条項を入れるべし」と発言した。まだ本当の意味はわからないが、要するに日本は「為替を介入して景気対策にするな」と言いたいのだろう。

それなら私も納得する。日本は、こと為替に関する限り、後進性が強く、景気が悪くなったり、企業収益が落ちてくると、為替をテコにして景気たち直しをしてきた。株式市場も、円安大歓迎で、市場にかかわるコメンテイター(ストラテジストとか為替専門家)たちは、毎日のように対ドルで円高だったか、円安だったかと、株式市場の材料にする。これにはうんざりするばかりだ。

もともと7年前までは公式にも「日本は為替介入をすると表明していた」これは発展途上国が為替を頼りに(いてみれば対米輸出をもっとも大きな材料と見ていたのだ)経済成長を遂げてきたということなのだ。別の言い方をすると、政府も経済界も日本の経済政策の実行に当たり 景気対策としては、設備投資とか消費を為替よりも軽視してきた。それよりも円安のほうがてっとり早く成長を促す材料だからである。

私の提唱は、為替依存のメンタルはやめた方がいいのではないか、ということだ。国内政策に失敗続き(GDPを引き上げられない)の安倍―黒田ラインの金融政策は、注目されず、責任も取る人もなく、野党も気にしない、いわば、不毛の政策におちいっている。にもかかわらず消費増税だけはスケジュール化して、喫緊の課題である財政の危機は先送りされるばかり。

日本は為替となると国家の一大事のごとく大騒ぎして、近隣窮乏化政策を頼りにして一喜一憂している。個別の企業はコストに重大な配慮をして為替変動の耐久力をつけてきた。今追いつめられてきたトランプ大統領と閣僚は、はじも外聞も捨てて、本音がほとばしり出ている。「ドル高を維持してきたから、その恩恵が諸国に波及してきた。今や諸国の貿易の成功の返礼としてドル安を政策としたい」とでも言いたいようだ。アメリカとしては諸国の成功の背景は「為替の介入だったのではないか」と言いたいのだろう。