株価が上がればそれで十分という態度がそこここに見られる。日本株長期低迷のあとのお祭りだろうか。さる10月31日、前日のNY市場の431ドルという大幅反発のためであろうか、前日発表の大手企業のサプライズ決算のためであろうか、日経225は寄り付きから急上昇した。メデイアはなぜ予想が間違っていたかの追求よりも、予想と、今回の上半期と通年予想が当初予想よりもはるかに大幅だったことを喜んで、なぜ大きなギャップが生まれたかを追求しようとはしなかった。

アドバンテストもソニーもサプライズの仲間であった。ながい間低迷していた株価が反発に転ずるならば、企業がフェアデイススクロジャーをどう考えているかなどは関心がなかったようだ。それはそうだろう、多くの不安を抱え込んだ株価が低迷から脱しさえすれば、情報の取り扱いといった問題はどうでもよかったのであろう。この2銘柄とは中立の立場にある私は、日ごろ疑問視していた案件について、口を開く資格はありそうに思えた。

つまり、もともと企業発の情報についてはフェアーでなければならない。情報の空白期間がつづき、アナリストも機関投資家も、業績基盤は「弱い」という通念にとらわれていたのか、また企業が(受注産業なりの秘密保持のためか)好調な業績を隠したがったのか、知る由もなないが、アドバンテストで上半期経常利益40%も予想を上回り、かつ通期予想も36%増加させたという事実。メデイアは驚いたと言うが、いったい誰がさぼっていたのだろうか。フェアーデイスクロはもともとはアメリカから輸入された企業倫理で、情報は同時に、かつ、すべての投資家に伝わるようにしなければならない、のが骨子だ。

そこには偏りも、ひいきもないのである。企業は受注とか国際競争とかの利益を左右する要素に常に敏感なので、余計な情報は出したくないという心理には追い込まれるが、一方 ESG(環境、社会、ガヴァナンス)という原理には当然フェアデイスクロが含まれていると思っていた私は、この好決算予想は誰が知っていたのかな、と疑問を思わざるを得ない。ネガテイブな情報は出したくない、ともいえるがポジテイブ情報も出さないという保守的な態度が問題なのかもしれない。

今回の決算発表で気づいていたが、1割や2割の増減益によるサプライズは日常茶飯事のようだ、情報の流通に断絶があるのか、それとも私だけが、大幅な増益を知らなかったのか。え?ソニーってそんなにもうけているの? え?配当は たった30円なの? 情報孤立人間という、なんとも愚かな私です。