一般に投信を購入するときには手数料がかかります。およそ金融商品に手数料がかかるのは理の当然です。まず手数料が安いということはどういうことかと言いますと、投資家の買い付けコストが低くなるということです。募集にあたって人件費がかからないネット販売などは販売手数料が下げられる代表例です。一方で、コストとなると忘れてはならないのが投資顧問料です。これは販売コストではなく運用コストです。よってコスト引き下げは投資家に歓迎されても、“肝心の運用コストを下げられると、投信会社は優秀な運用ができなくなります”。自分の身をかじってしまうようなもので、手数料引き下げ競争に陥ったファンドはお勧めできません。値下げしてたくさん売ろうという商法はスーパーマーケットの手法で、投信にはなじめません。
最近投信の運用にテコ入れしようという運動が始まっている様子。今更ですが、運用を上手にやって、投資のリターンがあげられれば、これに越したことはない。投資資産が恒常的に増えれば、法人も個人も年金分が増えるといった追加的な意味で、また老後の資金計画なども大いに役立ちます。運用技術、運用経験、を評価出来たら、この人的資産は、貴重な価値があります。ましてや日本は運用後進国ですから、もっと早い時代にこの問題に手を付けるべきでした。しかしながら、人材不足というか、日本の運用は、欧米に近い形で、もともと証券、銀行の役割増加という事業拡大に引きずられて、近代化が遅れていました。今では「独立しています」「かつ、自主販売です」というのがまともな姿かたちということになりました。格好いいですね。
上に立つ指導的役割を果たす人材が少なすぎるでしょう。言い換えれば、素人が運用を牛耳ってきたのです。失われた何年と数えればいいのでしょうか、その間欧米では、ケインズ、ベンジャミングラハムを祖業として運用の近代化が進んで、テンプルトン、Hマークス、など「賢明なる投資家たち」が莫大な結果を出しています。日本は、今や証券銀行の主導での、運用業務は日本の近代史のブレーキとなっているとの認識を持っても間違いではないでしょう。運用環境、人材の輩出、運用哲学の確立などは大切です。どんどん進めるべきですが、この国では「プロ中のプロ」の世界を先導するのは誰でしょうか。野球、サッカー、テニス、など、スポーツの世界でも優れたコーチのもとに素晴らしい選手が出ています。優れたコーチのもとに世界的な選手が輩出しています。さて、運用の世界では? 考えれば考えるほど、難題です。頭が混乱してつらくなります。