先日大江英樹さんのお話を聞きました。すなはち、行動ファイナンスとはなにか、どのような現象をいうのか、というテーマですが。このテーマはいつ聞いても、また読んでも示唆に富んでいます。同時に、人間の愚かさをまざまざと教えてくれもするのです。経済学とはうたっていますが、学問としては到底科学ができない分野で、もし大学で口座として取り上げるならば、心理学の分野ということでしょうか。言ってみれば、投資の心理学、消費の心理学ということですね。
人間とは、、、欲望の塊で、また野心の塊でもあります。人間とは、、、お隣さんの行動が気になって仕方ないです。人間とは、、孤立をおそれ周りの人たちと一緒に行動したくなるものです。人間とは、、記憶に支配されるものです。人間とは、、、衝動的にうごくものです。人間とは、、、錯覚のなかに生きているものです。など、人間がいかに弱いのか、いかに非科学的に生きているのか浮き彫りになりました。大江さんの語り口は実にこなれていて上手です。
1980年代私も投資の心理学を学びました。拙著「ファンドマネジャーを知りたい、あなたに」の143ページに取り上げていますが、人間の希望、欲望、夢、失望、絶望などが投資の平静さ、客観的な態度をすっかり変えてしまうのです。そうですね、人間の内側と周りは誘惑を勧める悪魔だらけと言ってもいいでしょうか。株式投資で成功するには、人間は自己と闘わなければなりません。たとえば優良株を買うけれども、株価は下がる一方。失望したり落胆したりする人間には冷静な判断が必要なのですね。その投資先の企業が優秀なので、株価が下がっても心配しないという確かな信念。また株価は、結局またもどってくるので、待っていればいいという冷静さが求められますが、株価の値下がりに耐えるチカラこそが投資の成功の条件ではないでしょうか。また、同じように、期待外れで株価が下がってしまったとき、知恵のある人はナンピン買いができます。
ナンピン買いは簡単なように見えて、心理的には抵抗が多いものです情報不足の投資家には株価が思わぬ下げ方をすると、自信を失います、その株に嫌悪感を持つため、投げてすっきりしたくなります。そこをぐっとこらえてナンピン買い下がりをしてコストを下げておけば、再び日の目を見ることもあります。人間は合理的生き物ではないですね。非合理の塊です。喜怒哀楽の感情がいつもほとばしっていて、それが人間らしいと言えばそうですが、投資には短慮と映り、決して有利ではないのです。先入観で投資価値を決めたり、比較感ばかりしたり、市場の動向を気にしすぎたり、いやはや忙しいものです。ただ今株価は好調に推移していますが、すでにおおきくあがってしまっているので、暴落を不安視する向きも少なくないでしょう。5月23日の大幅下げは「それきた!」とばかりにヘッジをしたり、現物を一部を売ったり、「予想以上に儲けているうちに利益を確保したい」という、ほぼ投資家全員の見えない合意があったに違いないと思いました。
そういう時は、急変化に手も足も出ないゆっくりタイプの投資家は、しかし、銘柄が優良で、企業価値がわかっていれば、売り逃げ合戦に遅れたか、と不安になっても、投資家の不安心理の真っただ中にはいないでも済むようですね。いつものことですが、恐怖と不安が普通の投資観を狂わせます。