またか、歴史はくりかえすのか。誰と同じかというとかつての三菱重工のことである。今回の「余計なお世話ですが」は三菱電機を取り上げた。この問題は1997年のアメリカの三菱自動車とは異なり、セクハラではなく、もっと純然たる不正行為である。「純然たる」というのはおかしい表現だが、問題の内容が違う。1992年から1997年ごろは、セクハラ、パワハラまだ企業社会に十分認知されていなかった。三菱自動車に働く女性の集団訴訟がきっかけになって、騒動が広まり、アメリカの企業社会を揺るがした。結果、世界の自動車業界は、三菱自動車の不買運動による危機を迎えた。当時ファンドマネジャーの先駆けだったわたくしは、社内の議論の中で、三菱自動車はつぶれるかもしれないと憶測した。つまり 投資対象にはできないと。

ところが同族意識、国内企業の格式、社会的使命、国家への貢献度などの強い三菱グループは、ついに三菱自動車を救済して立て直したのである。わたくしは唯一の日本人としてアメリカの大規模ファンドに籍をおいていたので、(誰もわたくしを直接とがめだてはしなかったが)、心底から恥ずかしい思いをしたのである。今でも、もし当時の三菱グループの経営者が目前にあらわれれば「お前ら、恥を知れ」と怒鳴りたい。三菱グループは、財閥企業として団結力が強い。それが日本の産業(例:防衛産業)を支配するパワーなのだ。それはそれでいい。問題は悪事、不祥事をパワーがあるからといって(消える運命にある企業を)ごり押しして保存してしますのは、資本主義の原則に反して、チカラの使い方が今問題の独裁者とおなじではないか。

三菱電機の不正はむしろ根が深いし、重大問題だと思う。顧客の信頼を得て、販売している機械類の品質検査を怠ったらしい。しかも顧客に説明もしないで、手抜きしてきたこと、役員たちも、どうやらこの不正を知らされていなかったこと、「俺たちは国家の三菱だ」とだお高くとまって客を客とも思わない傲慢な態度が透いて見える。ここで、わたくしは声を大にして投資家を後押ししたい。そんな企業の存在を許すな。と。エンロン、アーサーアンダーセンなど、アメリカでは社会から葬りさせられた大企業も少なくはない。現代社会で、まるで不祥事を「酒の席だからしかたないじゃないか」などという取り扱いはやめよう。公金横取り社会、不正温存社会、はきっと今どきの円安の原因かもしれない。