久し振りにアマゾンで2800円の新刊本を買った。著者は野村総研でエコノミストを務めているリチャード クー氏。タイトルは「追われる国の経済学」と少々わかりにくい。ひさしぶりというのは、私が長い間左目を患っていたので、テレビはじめインターネットとか映画、本などとは離れていたからだ。で、今回 分厚い本を注文したことは左目が視力回復してきたということにつながるわけだ。

このところいわゆる著名なエコノミストや中央銀行のトップたちが経済の状態を見誤ることで、政府に適切な経済政策の助言をできなかったのは、「彼らは経済政策の分析を誤って正しい提言をできなかった」と、クー氏は巻頭で述べている。最近激しく貿易相手を罵倒したり、国境に境界線の塀を立てたり、軍部が政治をつかさどったり、ポピュリストの台頭が盛んで、「バランスシート不況」(クー氏)に陥っている各国の経済はジレンマを救う適切な政策に欠けていると言う。

私はクー氏とは面識がない。私は、もともとアメリカの運用会社で働いていたため、ゴールドマンとか、JPモルガンなどの大手のレポートにはなじんでいたが、日本の証券会社の英文レピートは社内で配布される数が少ない。したがって、読む機会は少なく、結果クーさんと面談や議論する機会もなかった。しかし、外国会社日本事務所に働くエコノミストとかストラテジストは 「日本バイアス」が少ないので、じつに役に立つのだ。日本バイアスとは日本通になって、日本を擁護したり、また日本文化の訳知り という立場 で、日本をほめちぎる。つまり日本人の機関投資家にもてもての仕事人になっている人々を言う。

日本は特別だとか別格だとか、この島国を別格扱いすることがはやった時期があった。たとえば、日本の高PE株などを例外にしてしまうのである。世界の経済とか企業とは別の部屋で分析しているようなもので、極めて不平等であった。それがリーマン不況以来世界の大企業と日本の企業を平等に扱い、比較するようになった。外国人投資家が大量の日本株を保有するようになったからであろう。気が付けば世界の大手100社の中に日本企業はトヨタとかドコモとかわずかに5-6社を数えるのみとなった。

これぞ日本企業の実力なんだろうなと私はどこかで、納得していた。これからクー氏の本を読み進むにあたって、日本経済がどのように評価されているのか、されていないのか、気にしながら楽しもうと思っている。