最近本屋に並んで5500円の本を買う人たちが目立ちます。いったい何を買おうとしているのかな?とみていますと、それが昨年からことしにかけて話題となったトマ ピケテイーの「21世紀の資本」という分厚い本でした。昨年アメリカでこの本がはやっていたのは知っていましたが、あんな単純な経済原理を書いた本がこんなに騒がれるとは思いませんでした。
その基本命題は: 「資本主義は拡大するー収益性は次第に逓減するーその過程で貧富の差が大きくなるーその差を是正するために富裕税を世界規模で導入するべし」というものでピケテイーは、「歴史は資本主義が発達しても全員が豊かになることはないということを過去200年の国別データをそろえて証明しよう」としました。ということは私たちは「資本主義が今の世の中で比較上もっともいい制度であって、未来は明るい」という夢と期待を返上しなければならなくなったかもしれない、と言うきつい失望感を投げかけてきたのです。
昨年NYで若者のデモが盛んにありました。いつまでたっても就職もできない、ましてや所得が増えない敏感な若者は資本主義の制度の欠陥に気づいたわけです。国の半分以上の富がたった上位10%の人たちに握られている現状、何とかしろ、というわけです。一方、マイクロソフトの創立者、ビルゲイツなどは、富裕層に課税することには反対しています。彼は既に妻とともに財団を設立していて、多額の寄付をしています。今さら課税もないだろうという態度でしょう。
もし、仮に富裕層から多額の税金をめしあげて、貧困層に配るとします。それは一種の美徳には見えますが、貧困層は間違いなくその恩恵の上に胡坐をかいて、さらに働かなくなります。富裕層とは才能と努力でお金持ちになったので、泥棒をしたわけではないのです。貧困層は機会に恵まれなかったという不幸な人もいますが、押しなべて才能がなく努力が足らなかったと言えましょう。
それでも、ピケテイは資本の増殖が経済成長を上回る(需要不足)問題が資本主義の病気だとするならば、何とかして資産を配分して収入を平均化しないと、不幸な出来事に見舞われるという心配をしているのでしょう。宗教戦争という名を借りて、実はお金を取ってしまえ、さもなくば殺してしまえという革命もどき(実はテロに過ぎない)活動をしている人たちがいます。これは考えさせられますね。
さて、日本は? 他の先進国に比べて日本は貧富の差が少ない国です。そして富は個人によりは企業に保留されているのです(と書いてあるのですね)。アベノミクスを頼りにしなくても、わたし的に考えれば、かつての高成長とバブル時代で経験してきたように、企業が自主的に給与を上げて、また配当金も増やして、消費と投資を刺激して成長をうながせば、日本の国家の成長は需要に追い付け追い越せとなるのですね。結果、株価は大きく上がるのです。はたしてどうなりますか。このアプローチ、私の好きなサプライサイドって言います。
(日本人のためのピケテイ入門―60分でわかる「21世紀の資本」のポイント より)