英語にすれば Draghi Strikes Back とでも言うのでしょうか。まあ、言ってみれば7月6日の朝は日本市場は「ドラギがまたやたったね」という印象でした。イタリア人ってほんとうにおかしいですね。歴史上ものすごい天才もいれば、世界に冠たるデザイン王国でもありますが、一方で、おバカと言っていいほど不道徳な政治家もいます。マリオ ドラギはそのなかでエリートのテクノクラートです。テクノクラートは普通高級技術官僚といわれていますが、この場合は学者に近いのではないかと思うのです。つまりドラギはアメリカのMIT大学で経済学博士号を取っているからです。

昨年の11月、ドラギはECB(欧州中央銀行)の3代目の総裁として「EC諸国の金融危機に当たっては無制限の資金供給をする」と宣言して世界を変えました。この発言が金融危機に陥っていたヨーロッパ情勢を救ったばかりか、結局アベノミクスという政策を引っ張り出し(3本の矢)、日本を救うきっかけとなったのです。今でも私はこのドラギ発言が日本のデフレ脱却の立役者だと思っています。と言うのは、もしECBが何もしなければ20年の間デフレを容認して、保守で固まった日銀が「無制限の資金投入をする」などと宣言するはずがなかったのですから。

この日銀は浜田教授とかドラギのような外部の先導、示唆、がなければいつまで経ってもデフレ脱却はリード出来なかったでしょう。今回のドラギ発言は、リーマンショックの建て直しを狙って資金供給を続けてきたアメリカがそろそろ撤収と言うか、回収にかかろうとしているときに出ました。つまり欧州はいまだ不況の中にあって、更なる金利引き下げが必要だという認識なのでしょう。アメリカ育ちの教養あるドラギがアメリカと正反対の金融政策を打ち出さなければならないほど、ヨーロッパは回復の度合いが低いと言うことです。CNBCのコメンテイターは、こんにちでは「日本の半分の成長力しかないヨーロッパが、いつ日本に追いつけるのだろうか」と識者に問うています。二人のマリオ、 マリオモンテイと、マリオドラギは優れたテクノクラートで、いまどきのイタリアでは救世主的な存在でしょう。しかも国民の信任が高いのです。政治家らしくない政治家が国を引っ張るのは異常かもしれません。が、それがイタリアの良心ではないかと思うのです。

世界は今2分していて、好調な日本とアメリカ、対して不調なBRICSと欧州という図式になっています。今欧州が回復を始めれば、(円 vs ユーロ関係) は別にして、日本にはプラスになります。そういう展開を予想させるドラギ発言でした。