最近投資家の鑑ともいわれているW.バフェット氏の記事が新聞で続いて、世間はもうスクープ扱いで、一面記事に沸いているようだ。わからないでもない。何しろ世間的には、コロナ、さらにはロシアの侵攻で、成長不足で、不安極まりない時代であるから。バフェット氏は心得たもので、アメリカ国内でも、時として大手新聞に取り上げられて、今や「世界の富裕層を代表する」投資家という民主主義国家群の経済、景気の道しるべの役割を担っている。

わたしが気になったのは、彼が記者の一撃ともみられる質問には答えていないという事実である。彼が投資の指針としている教えは、ベンジャミン グラハムで、それこそ近代投資のファンダメンタル投資哲学を広めたひとだったのだから。あくまでも企業の利益とか純資産とかキャッシュについての、割安度合いを根拠としているのだから、記者の質問は、「記者にはスクープ的な扱いをしてもらいたい大ヒット」と思い込みが見え見えで面白い。

もし私が記者でインタビューをして、絶対に聞かない質問(答えてもらえないことがわかっている部分)は 1)日本株をどう思いますか?買いますか?売りますか? と 2)割安株はどれですか? である。わたしの理解では、バフェット氏は、いつでもグラハム派であって、今までも寄り道をしたことがない。おかしいな、バフェット的ではないなと感じる時には、たいてい、投資の考えに「国家経済の存続」にかかわるところがある。つまり、私の憶測するところでは、バフェット氏はどうやら時代の局面に当たって、ワシントンと意見を交換しているのではないかと思われる節がある。かつて米国鉄道株や食品株に投資したときはそう思った。

日本の商社株に投資したときは、やっぱりフリーキャッシュフローとROE なんだなと思っていた。記者の理解はそこまで及んでいない。ただ一面記事として「大衆の思惑にぴったりと思った見出しが欲しかった」のだろうと憶測する。メデイアの株式市場にかかわる記事でいつも大衆の関心を集めるのは、残念ながら「誰が、いつ、なにを、どのくらい買うのかというテーマ」である。よく記事を読んでもらいたい。バフェット氏はそういったタイプの質問には何も答えていないのである。ご注意申し上げたいこと、需給関係と企業価値はよく対立する概念ではある。取り上げやすいが、本質はついていない記事が需給関係の記事、新人の記者には荷の重いテーマになっていると思いませんか。多かれ少なかれ、株価は時代の表現者。上がれば善、下がれば悪といった呪縛から抜けだそうではないか。少なくとも記者が証券会社の営業部長の代わりをすることはやめたい。