昔からと言っても1980年代から、つまり1983年の上場の時期から、ヤマダ電機は目立った成長会社でした。そのうえ山田社長と幹事証券の野村証券が強く投資家に業績をアピールしていました。生来のへそ曲がりの私は、そういったにぎやかな成功物語には耳を貸さないで、それよりもむしろボヤきのような調子でお話をするギガスケーズデンキ(現在のケーズホールデイング)の加藤社長のビジネス哲学に耳を傾けていました。まあ、相性とでもいうのでしょうか、ヤマダ電機とは相性が合わなかったのですね。

最近、新聞の記事を読んだり(見出しは「ヤマダ、初の最終赤字」)、また四季報を調べたりしているうちにどうしたことか、ヤマダ電機のことが気になりました。いったいどうなっているのだろう、と好奇心がわいてきました。この株、純資産の0.5倍以下に売られている。それっておかしいのではないか。2兆円もの売り上げがある日本一の家電量販店の株式が純資産の半でうられているなんて。にわかに興味が沸いてきました。

いったいどうしたんだろうという素朴な疑問がわいてきました。14年3月の売り上げ、利益がともに急速に減るという予想です。借入金はいつの間にか3000億以上にも達し、またROEは4倍台に落ちるようです。事業を手広く広げてみたがいまだ軌道に乗っていないということ、また薄型テレビの売り上げが不振ということ、ネットの家電販売には負けているということ、人材投資に力を入れていることの負担、海外の店舗閉鎖が特損を出している、などなどの弱材料が見受けられます。

ネットビジネスが世界中を席巻する中、巨大な箱を作って売り場に人を集める商法はどうなるのでしょうか。しかも、新聞に報じられているように、ネット価格に対抗するのは並大抵ではなく、更なる価格引き下げを強いられそうです。かつて、ヤマダ電機は主張していました「我々売り方が価格の主導権を握る時代が来る」と。しかし、その時代は今や過ぎ去ろうとしているのではないでしょうか。思い出すと、ケーズHDもネット販売の威力を軽視していました。スマホの威力、ネット販売の威力、たいしたことはないと無視できる時代はとっくに去ってしまいました。

もう一つの疑問は、最近ヤマダ電機は株式の分割をしました。結果2800円ほどの水準に対応する株価は今は260円です。本当に10倍の分割をする必要があったのでしょうか。これも疑問です。では、これはどう評価しましょうか、ヤマダ電機は6000万株の自己株式買いの方針を決めました。