去る6月30日の日経新聞のオピニオン欄に中山淳史氏が投稿された「J&J ESG歴79年」
が私のハートに火をつけた。日ごろESG 云々については、我ながらとうてい納得できない心境でした。輸入の横文字を本来の意味を咀嚼、理解する前に飛びついて流行させるわが日本人が何やらあさましいと思えるからである。最初にESG とは何なのかという疑問が生まれました。発足は国連のような高い地位にある人がEとSとGをくくったコンセプトを立ち上げたらしい。これが困ったことに、コンセプトがバラバラで、一列には論じられないことに気づいた。
どうしてこのコンセプトが取り上げられたか、考えてみると、きっかけはコロナのもたらしたパンデミックを何とか乗り越えたい願いがきっかけで、全世界的な金融緩和が始まったのだが、それまで、投資先の株価を引っ張り上げようと躍起になっていたファンドが、この幸運に飛びついたのが本音のところだろう。
ファンドには世界中にある余った基金が集まっていて、その投資先とは、特に高いリターンが望める企業に資金を投入する、いわゆる物言う投資家のことだ。これらファンドの資金力が、株主総会では強力な交渉力になる。ゆえに、ファンドは株価を釣りあげる経営(例:株主還元、とか 経営者の交代とか)を投資先の企業に提案(強要)して、結果が株価上昇をもたらして、ファンドを儲けさせる。
このからくりにはまったファンドが上場企業を本来のあるべき価値以上に株価を釣り上げた。今回運よくファンドはESG導入のおかげでバーゲニングパワー(対企業交渉力)を高められたのだ。
低すぎる金利、多額な流通通貨、などの弊害が、またウクライナの戦争が、インフレを呼び込んだことがきっかけか、今まで有り余る資金があふれていた金融市場に逆風が吹き始めた。つまり各国は(日本を除いて)インフレ対策を取り始めた。
通貨の価値の減価、企業成長の低下をもたらす反インフレ金融政策が世界の株価をすでに20%も下げさせている。自国優先主義、孤立した保守主義の日本は世界の潮流とは逆にかたくなに、緩和政策を続けている。今やお笑いぐさ。しかし、これからはアメリカや世界の国際企業が円安の影響に困ってくるのは間違いない。
となると「アメリカ追随が金科玉条の日本」は政策変更をせざるをえなくなる。日本株の暴落を心配始めた投資家、関係者がこれから増えてくるだろう。
ESG の意味するところは、もともとファンドマネジャーが主張してきたことで、企業の真の価値(Intrinsic Value)に近づくことが投資の成功をもたらす最善の手段であることを意味する。EとS は実は普通のことで、真の肝はG だけである。
不祥事と経営の失敗続きの日本企業は「G の不全」に陥っていて、企業価値は大きく毀損されている。この寄稿は②に続くがその時はJ&J社、東京エレクトロン社、ユニチャーム社などのクレドに触れてみたい。