このシリーズを取り入れたのは8月22日でした。ここに第二弾をお送りします。

日本電産という電子部品会社(小型モーター)は優秀な企業ですが、大きな欠点を抱えています。言うまでもなく、今やマスコミで大騒ぎになっているテーマ「次期社長はだれに?」

のことです。創業者の永守氏は自他ともに許す「異能の経営者」です。著書、講演会などですでに知られている経営哲学は、一般的な優秀な経営学ではなく、特に個性豊かな独自のものということは、もはや言うまでもありません。朝は7時に出社するとか、ゴルフはやらないとか、傘下に併呑した企業の社員の首は切らないとか、他社の経営者を公然と批判するとか、普通ではないところが面白いです。

今まで何人か社長に招いた後継者はいましたが、誰一人永守氏を満足させた人はいませんでした。つまり第二の永守はどこにもいなかったということです。いくら探してもいるはずがないのです。永守という優秀な、特異の経営者はこの世に一人です。

ちょうどプロ野球の長嶋茂雄が、巨人軍の監督に指名されたとき気づいた事実「ナインとの中には理想の4番バッターが欠けている。長嶋はいないのか」とつぶやいた逸話が残っているくらいで。それと同じ経営環境に直面している永守氏ですが、前期の社長、日産自から引き抜いいた関氏について「株価が下がってしまった。責任を取ってもらう」とい言ったとか。しかし、それは関氏も納得いかないだろう。日本電産の21年の6月高値は7336円、1年後の2022年6月は8550円、17%の上昇であった。一方日経ダウの値上がりは、35%であった。同業のソニーと京セラはともに5%の値上がりでした。日経ダウの値上がりには110円から136円へと大幅円安時期で、為替のインパクトが大きかったようです。

ともあれ、株価とか時価総額は確かに経営者の鏡でもあります。参考にするのはいいが、ほかの判定要素として就任期間を考慮したり、チームワークを加味したり、またマクロの背景も検討したりしなければならないでしょう。永守氏は勝手に基準を設けて経営の良しあしを判定するのならば、CEOたるもの釈然としないでしょう。

そのうえ、各所からスカウトしたとされる人材の多くは、もとの企業のガバナンスの評判は最悪だったと思われます。ガバナンスの働かない組織から人材をスカウトするなんて、永守氏は鼎の軽重を問われているのに気づかないのだろうか。つまり、賢明に宝物の人材を引き抜いたということではなく、もういらないとお墨付きをもらっている人材を(その人材は元の組織から抜けたい思っていたにちがいない)拾ったということになれば、何おかいわんやであります。

永守氏は、自分の分身を外部に求めたわけでありますが、自分が鏡に映るかのような人材が(特に特異な経営者永守氏のそっくりさんが)外にいるわけがない。新聞によれば、永守氏はその真実にようやく気付いたらしい。余計なお世話ではありますが、こうなったら、永守氏はCEOを引退しないで、いつまでも日本電産のCEO で会社を引っ張ることしか選択肢はないとお伝えしたい。