住宅機器の企業LEXILグループ(5938)はオーナーの潮田氏が、経営のプロを呼びLEXILを経営してもらっているらしいです。そういう経営のプロを採用して、企業の創業者とかオーナーが経営を委託するようなスタイルは、実験かもしれませんが、一つの見識で、いま期待されています。

その中でもうひとつの例として、かっぱえびせんのカルビー(2229)が創業家が社外取締役だった松本氏を会長に招請しました。興味ある役員組織は、松本会長と伊藤社長の二人が社内役員で、残りは社外取締役です。そういっては失礼ですが、普通のスナック菓子のメーカーがガバナンスを徹底することを新組織のスタートの柱としたのです。日経ビジネスの編集長インタビューに登場した、松本会長は興味ある実践経営のお話をされています。

まず、日本国内には食品業界には魅力ある買収対象はないと言い切っています。また、フリトレーを買収したので、その経緯から学ぶところが多かったようです。グローバルな食品メーカーの営業利益率は15%程度もある、またフリトレーは27%だった。なぜ日本の食品メーカーはこんなに利益率が低いのだろうかという疑問を持ちました。ちなみにカルビーの前期営業利益率は7.5%です。では、これからカルビーは利益率を上げることはできるか、と言う疑問については合理化を進める余地があると言います。たとえば外国の食品メーカーの営業マンにはデスクがないのに、日本では全員デスクをもっていると。

日本の食品事業は製造と流通段階で利益が6ポイントづつ削られている、フリトレーの営業マンは朝6時に自家用車で商品搭載のトラックに向かいます。トラックに乗り換えて、顧客を回って配送を終えた午前11時に彼らに会えば、すでに6-7軒回ったと言うそうです。

フリトレーを買収した経験があるカルビーはこれからも利益率の高い外国食品会社にM&Aを仕掛けると公言しています。売り上げの10%程度しかない外国売り上げを30%に引き上げたいと目標を持ちます。長い歴史と伝統のある、しかしスローな国内の食品会社の中から、すごい会社が出てきたものだと驚きました。しかし、その背景がわかって納得したのです。松本氏はあの「クレド」(経営の精神をカードに書いて社員に配布している)で有名なジョンソン・エンド・ジョンソン出身だったのです。この人事を断行した創業者こそが目利きがあったということになります。私の注目するPBR/ROEモデルマトリックス(モルガンスタンレー社提供)によると、カルビーのROEは今期ついに10%を超えますが、更なるROEの向上を織り込んで株価(8070円)の予想PBRは3.2x。

ところが、すでに市場はPBRが3.5xまで成長する期待が込められているような気がします。これからの成長期待が高いゆえでしょう。