人様の批評をするほど私はえらいわけではなく、一人の、金融界(特に投資信託業界)に半世紀も身を置いた普通人ですが、孫氏を長い間観察していました結果、皆様に私の孫氏のあまり目に留まらない姿を私の目というかカメラでどうとらえたかご披露したいと思います。

いうまでもなく孫氏は今や世界でも有名な金融界というか、実業界の雄です。得意技は、本人が言っているような資産の運用ではなく、集金して起業するというところでしょう。

お金集めは知名度から言ってもトップクラス。何兆円でも集められます。

もともとアメリカのシリコンバレーに育っていますから、人間関係を構築する環境は素晴らしく、ハイテクの先端技術の情報、そして機器の販売は得意中の得意です。アップル、アマゾン、フェイスブック、グーグルなどのトップたちとも付き合いは、日本人の誰よりも固いといえます。高い知名度、評判、そして立身出世の経歴など、巨額の資金を集めるには格好のバックグラウンドがあります。

ただ私が気になったのは、孫氏はポートフォリオ資産の運用者ではないということ、むしろ起業家として、新しい事業を立ち上げたり、企業を買い付けたり、または売り抜けたり、技術に目を付けたり、イノベイションを追いかけて、多額の資金で勝負するという、今や伝説の資産運用者になっています。ところが、私の目から見ると、それほどの人物でもかなりの度合いで錯覚しているように見られます。そしてマスコミもそのあたりのずれを理解できないでスター扱いをしているようです。

彼の観点は投資先企業、事業の価値を上げることで、価値のあまり表面化する前に、時代の変化をかぎ取って、育てて大きくして、売り抜けることです。それは事業としては、ごく普通のことで、珍しくはないです。ただ私が珍しいと思ったことは、彼は企業、事業に興味はあっても、その事業体が「利益率を上げて年間収益をどのくらい生んで(PL-貸借対照表の視点)、配当の原資とするか」、よりは、「世間の評判を含めて、企業全体の価値がどのくらい上がるか(BS-バランスシート視点)」で、企業を評価していることです。

ということは成功事業を売って、失敗事業の穴埋めをするという経営哲学のような感じを受けます。本人が主張するような(旧来の投資家、でも運用者)でもなく、新しい時代のオーナーシップを世界レベルで発現しているのでしょう。最近収益性が伴ってくると思って手に入れた事業で大幅な損失を出しています。それを補うために収益性の高く、将来有望な事業を切り売りしたり、また持ち分を下げたりしています。こういう経営が続くと、質の悪い事業だけ売れ残って、価値のある事業は人手に渡ってしまうことになりますが、そして結果(手持ちは)は傷だらけの事業ポートフォリオになってしまうのですが、いかがなものでしょうか。