XXXX編集長様、

2016.2.29 吉野永之助

定期購読中の御誌の「味の素」を読了して感激しました。なかなか優れた切り口と、問題意識など、すでにリタイアはしましたが、私の経歴のなかで 長い間わだかまってきたものが吹っ切れました。

私は長年アメリカ国籍の投資顧問会社のファンドでファンドマネジャー、アナリストを仕事にしてきました。そして、時々仲間や顧客から解決もできないような質問に遭遇することがありました。「日本の食品会社は買えるのかな」とか、「日本の食品会社はどうして日本のエレクトロニクスのような素晴らしい国際企業がないのかな」などという質問に出会うときです。私は、適切な答えを持たずにいつも困っていました。私の常用する答えは1)日本には1億3千万人の消費者がいて、外国に進出するインセンテイブが生まれない、2)これという商品がない(まさか即席ラーメンとか調味料では)、3)経営者にその気が全くない4)国際事業を経営する能力がない、5)ガバナンスへの理解も、事業への野心も哲学もない、6)株主に対して成長を提示しない、などでしたが、それでもすっきりしません。

今回の御誌の特集はいいままで、日本の国内企業群が持っていたジレンマとか、欠点に鋭く迫り、経営者たちに覚醒するように仕掛けたように思えます。出来もいいですし、47ページの理念のところは秀逸に思います。経営者はやる気があれば、JTやキリンの無謀に見えるM&Aなど勉強したり、真似したりすることはできます。ダノン、ネスレ、GFなど諸外国にはいくつもの成長と拡大のサンプルが転がっています。にもかかわらず、そういう快挙に出ないのは、やはり月並みですが、井の中のカワズだからでしょうか。

当然と言えば当然ですが、御誌の企業、産業の分析比較では、やはりアナリストとは目的も異なり、私のような経験者には不充足に感じていましたが、今回は目からうろこの味の素の記事でした。さて、味の素はこれからどうやって国際人を育てればいいのでしょうか。外部から人を入れるのは保守的な会社は嫌うでしょう。

今まで割高感から、投資したこともなかった味の素ですが、改めて見ると相変わらず割高に見えます。ブランド力を買い被る国内投資家、ジャパンインデックスでは入れざるを得ないシステムの外国投資家、などが少々無理をして組み入れているとしか思えません。この記事をきっかけに国内の低成長の大企業が目を覚ましてくれるといいのですが。長引く株式市場の低迷で、上場企業は今やほぼ中小企業になってしまい、時価総額大企業は消えていきました。これから日本は世界に追い付かないといけない時代になっています。

ありがとうございました。

2016.2.29