ROEが投資家の関心を呼び、また企業もROEを経営の指針としようかという時代になると、マスコミはROE の高い企業をくくって優良企業だとかレッテルを張りたがります。また、逆にROE の低い企業経営者を刺激して、ROE の目標を言わせたりしています。最近は、企業が短期投資家を嫌って、長期投資家、もしくは安定した投資家に何らかの優遇策を授けて、「長く保有していたら、いいことがありますよ」とメッセージを送っています。
流行とは恐ろしいもので、最近の例では5月の27日には60%ほどの日本企業が株主総会を開いてしまう、その集中度合いはハンパではない、と識者に言われました。もっと株主のことを考えて、総会を集中させないで、分散させた方がいいのにという声はかき消されてしまいます。本来株主のための総会が、企業の利便のために存在するのが日本でしょうか、という外国人投資家の声がありました。
5月末に総会を集中させるのは、総会屋を遮るための有力な手段だったことはこの国の誰しも知っている常識です。惜しいことには、総会屋がいなくなっても、いまだ総会屋対策的な行事として株主総会の日どりが決められていることです。
長期株主を優待しようというトヨタの種類株式の発行は、私の印象では、トヨタは「ブランドのチカラを頼んで株主を選ぶ、という逆差別に出たな」、というものでした。企業は短期の株式売買が株価の乱高下につながり、ひいては株主から「いったい会社はどうなっているのだ」などと株価の責任を会社に押し付けてきます。そういう株主が実に多いと聞いております。ですから、短期投資家を企業が毛嫌いするのは、よくわかります。では、長期投資家を増やすのはどうしたらよいか。ということですが、「アメや鞭では株主に失礼でしょう。もっと継続的な成長を遂げれば株主は定着しますよ」と、私は、長期投資家を切望する企業に言いたいのですね「持続的成長を遂げる努力をつづけなさい」と。それが、答なんですと。