1970年代にアメリカに足をおろしたころ、株式市場は「いわゆるニフテイーフィフテイー」でにぎわっていた1960年代からの余韻があって、機関投資家が株式市場の主役を張ろうとしていました。ニフテイーフィフテイーは期間投資家保有の人気株上位50銘柄ということですから、その中に当然ブルーチップスが入っているわけです。アメリカ株でいえばIBMとかエクソンとかGMというところですが、さて日本ではソニー、松下電産、パイオニア、トヨタに代表される国際優良株という呼び名を付けられた一連の株です。

1970年代、まだ若かった私は株式投資で目を見張る成果を上げるには、新しい名前が必要だと思っていました。IT業種に属する銘柄、新規上場銘柄、そして急成長銘柄など

を物色できる能力がファンドマネジャーに求められると。1983年にキャピタルグループに転職した私は、昔からの人気株ブルーチップでも大型機関投資家には有力な投資対象になるということを教わりました。それは実に平凡な原理でした。英語を使えば、Back to the Basics, 基本に戻れということです。

それ以来、大型資産には大型株(ブルーチップス)が欠かせない投資物件だと思っています。ただ大型株はタイミングを間違わない投資が大切ということも事実です。今日のように、レジームチェンジが認識されて、スイッチが切りかわってしまった市場では、投資機会は広く分散して、ブルーチップスをことさらに重点指向する必要はないのですが、ひとつ、「ブルーチップに悪材料が出て、株価が急落したような場面」では注目しなければならないのです。それが基本の基本でしょうか。ブルーチップスは成長力が弱いので成長を狙っては買いにくい。しかし、市場の評価(PER)は常に変動していて、割安になることがままあります。そこが狙い目ということです。

最近の事例ですと、社債発行発表で売られた「ABCマート」とか、期間業績の未達予想で売られた「ニコン」とか、中国への不信感によって悪材料が増幅された「ファナック」「コマツ」とか、テロによって被害者となった「日揮」とかが該当するように思います。企業体質的に強いそれらは何らかの突発的な、また季節的な弱い材料によって多くの投資家が不安心理に突き動かされて、売却するものですが、道路の反対側を歩く冷静な機関投資家は、その時を投資チャンスをと判断するわけです。こういう現象は50年も100年も、アメリカでも日本でも繰り返しておこるもので、原理があまりに簡単なので呆れてしまうくらいです。ファンダメンタルズという基本を、人間のエモーションが押し倒してしまうのです。