昨年の9月に頚椎を怪我した(岩田にさせられた)後藤騎手が復帰するようです。あまり騎手の好みで馬券を買わない私も今回は友情馬券を買います。無論時々自分勝手な思い入れ馬券を買っていますが、今回は特別です。ひとつには藤田騎手が、その著書「騎手の一分、競馬界の真実」のなかでこの事故に触れているからです。昨年9月この大事故のあと岩田騎手は見舞いに来たそうです。「あの日はこう進路をとって、、、乗ろうとしましたが、後藤さんの馬を引っ掛けてしまって、本当にスミマセンでした」と挨拶したそうです。

藤田は前から岩田や川田、そして蛯名が馬の背中でぴょんぴょんはねながら追い出す騎乗スタイルを嫌っています。あんな追い方をして馬のためにはならない。人間誰だって背負った赤ん坊が背中でぴょんぴょん動いたら気持ち悪いだろう、と比ゆ的に話しています。後藤の闘病生活は壮絶だったようです。昨年9月の事故から数ヶ月が経って12月に頚椎を手術、そして3月に退院、以後リハビリをしてようやく今年の10月に再び騎手としてJRAに復活します。なんと言う危険でタイヘンな、命を賭けた職業なんでしょうか。岩田がわざと事故を仕掛けたわけではない。そんなことはありえませんがスレスレの騎乗で強引に勝ちにいく騎手ではありえます。私は心の中であの強引な岩田の競馬を反芻して「岩田よ、やっちまったな」と彼を責めています。

わたしは後藤騎手の復活の日に応援馬券を買うつもりです。馬券が当たる当たらないはどうでもいいのです。それに一年ぶりでは騎乗の勝負勘も鈍りますし、なんと言っても傷の影響が心配されます。常識的には2-3週間ファンとしても様子を見るのは普通でしょう。私はちょっと違います。大怪我にも負けずに精進する後藤騎手を応援したくなるのです。私と言う競馬ファンはもともと岩田は好みではなく買わないほうなので、後藤を買ったからといって、動機は岩田への腹いせと言うことでもありません。

最近上梓された「騎手の一分」(講談社現代新書)は、いま巷の評判です。この本はやんちゃな藤田騎手のいつもの信念を書いていますが、それ以上にJRAと馬主、エージェント、営業行為、裁定委員、同僚の騎手、などをストレートに批判しています。無論競馬界を思えばこその忠告です。この本を読み終わって私は藤田騎手が“明日にでも競馬界を去る”決心をしたのだと判断しました。ですから、秋の競馬はやはり藤田騎手の応援馬券と言うか慰労馬券を買うつもりです。

私と言う競馬ファンはそういう人間なのです。われ思う、ゆえにわれあり(カント)