みずかみ まなぶという人は誰であろうか、そして何をしているのか、お仕事は、もしそういう職業があれば 「競馬の予想家である」。私は、この東大出の優秀な予想家をかれこれ20年くらい追いかけている。競馬でお金を儲けたいからではない。儲かるということはあきらめているが、「競馬は血統のスポーツである」と古人の伝えに従って、サラブレッドの血統を調べて、それを基準として馬券を買って、当てたいのだ。これが競馬のだいご味の一面ではある。彼はネットでも、またおおくのメデイアで活躍している。ひとつには、予想家というのは、レースの結果を予想して、たとえ無料でもいいから、それを仲間に伝えたいという欲求を満たす人種といっていい。

面白いことに、競馬の予想は幾多あって、人それぞれに個人的な予想ツールを持つ。それが、価値というものだろう。競馬(馬券)の予想は本当に難しい。当たれば大騒ぎになるし、外れれば無視される。予想家と競馬ファンの間にはしっかりとしたキズナがないのだ。その分適当といえば適当で、精密さには欠ける。古来競馬は血(遺伝と言い換えてもいいが)の学問だから、神秘性が人の心を揺さぶる。わたしの予想はお金儲けとは言わない。ただ予想した血統の特徴がレースに実現して、結果が出ることでいい。

むろん正確なというか妥当なというか、血統の分析があっていれば、競馬は当たるのだが。それが思うようにははかどらない。みずかみ まなぶ氏は年に二回、上下編として、6か月分のJRA重賞レースをお得意の血統分析を通して紐解く。タイトルの「重賞ゲッツ」本はコンパクトで役に立つ。わずか3種のサラブレッドの祖先から、今や枝分かれした千頭以上の父系統が市場に出ている。そして各馬の癖(いらつく性癖、埒沿いに走る癖、スタート下手、短距離上手の傾向、重馬場の巧拙)、などいろいろな個性をDNAして後世に伝えている。

またこれといった決め手のない馬も多い。われわれ人間とは違う面が多々あるので、我々人間はその性格とか性癖などを理解しようとして躍起になる。かつて武豊騎手は「馬のことばがわかれば、人間たちは何とへんちきりんなこと言っているんだろう?」とつぶやいたりするだろうな、と言っていた。本当のところ、馬はわからない。みずかみ氏もその中の一人だろう。一生懸命に馬の特徴を分析してその結果を我々競馬ファンに提供している。これも、彼にとっては学問の一種なのだろう。私たちは出版費用としてこの本にいくばくかの代金を支払う。