10月上旬にあらかじめ予定していた入院をしました。 その前に、(退院までは長くなりそうなので)、本を数冊アマゾンしておきました。その本は以下の3冊です。
大懺悔 (上林 暁)
国家の衰退(大前研一)
天皇論―日米激突 (小林よしのり、ケネスルオフ)
とりわけ上林の本は、文庫本という手ごろなサイズでもあったのですが、熱心に読んで感激しました。その感想をみなさんにご披露します。
大懺悔は、著者上林暁という昭和の初めの文学者です。この作家とは私の人生での初めての遭遇でした。その前に一冊読んでいたので、2冊目でしたが。田山花袋という作家が、日本の私小説の代表作家と言われていますが、上林も徹底的に私小説をやっていて、なかなか読ませるのです。
私小説は「小説家の身辺雑事などをテーマに」しますので、読んでいても息苦しくなります。私も昭和11年生まれなので、貧困、戦争、非文明、家族問題、不治の病、などの描写が痛いほど胸に感じます。とりわけ、第二次世界戦の真っただ中なので、戦争に直面した一人の人間がどのように苦痛を耐えて生きるか、また家族と自分自身が病気なので、絶望の崖っぷちで、生きてゆくのか、それこそ私小説のテーマとしての真髄に直面します。
まさに読ませる小説で、(自分をテーマにされた未婚の妹が「こんなことを書かれると、婚期が遅れてしまう」と兄上林に抗議するところなどまさしく 私小説そのものであります。お芋2個がお弁当だった時代、その弁当を巡って口げんかしてしまう病人の妻と作家(小説の主人公と同じです)あたりは、何ともやり切れませんね。しかし、この小説の強いところはういう場面から逃げないで徹底的にリアリズムの世界で書いてきたのですから仕方ないです。
大前研一は、この随筆の中で、予想通りの「安倍政治の不遜な態度、愚かしさを徹底的に攻撃」します。「せこいふるさと納税」「消えたマイナンバーカード」「時代遅れの一律最低賃金引き上げ」「罪深い文科省の学習指導要綱」」などなど。わたしもバズーカ以降の安倍総理大臣と自民党には絶望していますので、この本を読みながら心中してやったりと思った次第です。
疑問を持つ基本的、戦中派の私には、小林の天皇制批判には注目しています。外国人のケネスルオフとの対話方式なので、どうも焦点が定まっていません。あまりあからさまに天皇と天皇制を批判するのは、この国では危険ではないかと思ったのかもしれません。少々、矛先が鈍っていた印象です。
この3冊で、よかれ悪しかれ、私の27日におよぶ長い入院期間の慰めになったことは確かです。