どうもタイトルがおこがましい気がします。私はグルメでもないし、ましてや食べあるきの趣味があるわけでもないのですが、時々レストランや蕎麦屋などでおいしいな、気持ちいいな、うれしいなと思うことがあります。食の生活はいかにもエモーショナルなのであります。逆に、がやがやとうるさい客の声が天井から跳ね返ってきたり、バックのミュージックの音が高かったり、変なにおいがしたり、もう来たくないなと思うところも少なくありません。

先日用があって恵比寿ガーデンに行きました。ちょうど昼時なので、レストランに入りました。「ジャイタイ」というタイ料理の店です。私は早速ボケを見せて「ナシゴレンありますか」とウエートレスに聞きました。「ありません、それは向かいの店ですよ」と教えてくれました。ナシゴレンはインドネシアかシンガポールの焼き飯なんですね。我慢つよいウエイトレスさんは「メニューもってきましょうか」と聞いてくれましたが「いえ、いいです、トムヤムクンのヌードル入りのランチお願いします」と注文しました。

早速小さめの器にサラダが現れました。ソースが風味が効いて、ピリリと辛くておいしい。合格だなーと心の中でつぶやいたものです。テーブルとテーブルの間は鉢植えなどで微妙にセパレイトとされていて、隣の視線を感じません。椅子の横には小さな籠が置いてあって、バッグや小物を入れておけるようです。トムヤムクンの出番です。あまずっぱいスープ、お米の粉を使ったヌードル、唐辛子がピンク色のスープの中に浮いています。いいなー、この微妙な辛さと酸っぱさと、そしてめっぽう熱いのです。

聞いてみると、沖縄の唐辛子を使っているとのこと。また料理を作ったシェフは現地の人とのこと。日本人が好むようにすこしは味付けはモデイファイされていますが、現地の味にはかなり忠実だそうです。こういう妥協しないのがいいんだよなと私の独り言。食の文化論ということですと、シンガポールで味わったインド料理、NYの中華街、ロスの韓国人街、みな本国の味そのものを売り物にしています。つまり本物の味をローカル食文化で変えてしまわないのです。各国には移民が多いということも理由の一つ、よその文化を勝手に自国流に変えてしまうと、ローカルでは本来の文化に接することができません。

「単一文化の日本」の文化が強すぎるのが、この場合マイナスですね。せっかくの機会に異国の文化に触れられない、自己中心の味の食文化に危惧を抱いています。「ジャイタイ」とはタイの心という意味だそうです。最後にマンゴのような色合いのジュースをいただいて1260円払って、満足しました。誰も認めないとは思いますが、ミシュランなら一つ星をあげてもいいのではないかな、と思った次第。