まさか、の受賞でした。あのような大きな連合が授賞対象にあるなんて。しかし、私個人の喜びは大きいです。本当によかった。何が良かったって、それはノーベル賞の審査委員が「新しい、平和な欧州の建設を鼓舞しようとしているからです」ヨーロッパでは何百年も戦争があり、もっとも最近の血で血を洗う戦いは、1992年―95年のユーゴスラビアの内戦でした。ボスニア へルツェゴビナ合わせてわずか4年くらいの期間で死者の数は20万人に達し、難民は200万人もでました。

このような悲劇に終止符を打たねばならない。ヨーロッパは心を一つにして平和を取り戻したい。という願いが、1999年、通貨の統一という形で結成されたのです。この快挙が欧州の平和な未来への足掛かりとなりました。私たちの解釈によれば、通貨ユーロの混乱などは、争いの絶えない悲惨な歴史の終焉という事実の前には、たいした事件ではないのです。ひとことで言ってしまえば、殺しあうよりは貧困を我慢する方がまだいい。

たくさんの問題点を抱えたユーロ市場は大変な試練に立たされましたが、私個人は終始一貫として楽観的立場を保ちました。ユーロ圏から脱落する国はあるかもしれない。しかし制度は崩壊しない。あともどりなしです。何百年も争ってきた国がわずか7-8年で完全合意ができるでしょうか。波乱は続くのです。となれば、そうですね、今は次へのステップを模索する時期なのでしょう。

10月18日、欧州連合はユーロ圏の銀行の監督を欧州中央銀行に一元化する方向で合意しました。それも進歩でなくてなんでしょう。リーマンショックも、もとは金融危機でした。銀行行政を統一したり、また巨大銀行の分割などをしなければまた同じことが繰り返されます。という指導者たちの考えは、このようなステップをとりつつ、一歩づつ、次第に経済政策も、予算とか法律なども柔軟な姿勢とともに統一してゆくつもりかもしれません。ユーロは170円台から94円まで下落しました。いまは、世界中の疑心暗鬼の中で113円まで回復していますね。私の解釈は、“ヨーロッパの長い不幸な歴史を二度と繰り返さないために、まず通貨の統一に手を付け、さらには究極のところ、ヨーロッパが一つの国であるかのごとく制度、政策を統一するために”ノーベル賞審査委員はECに勇気を与えたのです。