8月に上のタイトルの本を上梓しました。この欄は期せずして宣伝になってしまいますがお付き合いください。もともと私は本などを書く人ではありません。学者でもなければ評論家でもない。まさに実践家です。ですから資産運用をすること、執行することが本職です。本を書いても私の思いを伝えることができるかどうか、また、伝える必要があるのかどうか、も定かではなかったのです。でも何か残すことは大事だという意見がありました。私のやっているファンドマネジメントの仕事はカテゴリーとしては金融の中で小さく、しかし預かり資産は莫大という特色があります。
ですから世間の目に留まることも少ないし、また学生が目指すにはファンドマネジャーとアナリストとして採用される人数は毎年せいぜい数百人です。ということは私がいくら書き残してもあまり世の中的には役に立たないということになります。ですが、この数百人の専門家は国家の宝といってもいいほど貴重な存在です。もし成功すればのはなしですが。私ごときが身の程知らずに、と少し恥ずかしいところもありますが、それらプロフェッショナルに、今や忘れられようとしているオーソドックスな資産運用方法を学んでもらいたい一心がエネルギーになりました。
20年も続くデフレ、下がり続ける株価、の中でもがいているファンドマネジャー。いやいや大変な仕事です。たとえば、政府が預かる共済年金です。多分50兆円はあるでしょう。優れたファンドマネジャーが運用して6%のリターンが得られるとすれば、年間3兆の収益が得られますが、逆に失敗すればそれだけ損失が出ます。そういう大きな危機を乗り越えて運用できるだけの才能のある人は世界広しといえども数百人でしょう。
いま苦難の時期に勉強している若い人たちのために役に立てたらいいなと思いました。この世界を目指す学生も対象です。私はA4サイズで3-4枚書きまとめる仕事(日本語と英語でレポートを書いていました)を40年やってきました。ということは、章ひとつひとつはA43枚分と読み易くなっています。その上、読者が退屈して投げ出さないように、半分は、車とか、料理、カメラとか競馬とかの趣味の世界を混ぜました。誰でも手に取るようなタイプの本ではないですが、お読みになった方は、確かに「できる人」だなと思います。
ご納得いきましたか。それがこの本出版の狙いです。