竹原はあまり知られていないのではないかと思います。私がカメラ散歩を考えるときに、いつも頭をよぎるのは、被写体として魅力ある日本の小京都を訪ねたいということです。まるで小京都ツアーコンダクターを目指しているような感じですが、実際日本の小京都にはカメラと相性がいいのです。
竹原は偶然見つけました。広島から呉線で1:50分ほどです。広という駅で乗り換えていきます。竹原は瀬戸内海に面していて、1650年から塩田を作って塩の生産を始めています。きっと塩大尽が多く生まれたところなんでしょう。1960年まで310年のながきにわたり江戸を初め全国にあまねく塩を販売しました。もうひとつの名産は酒です。酒造業も盛んで「安芸の小灘」と言われました。
300年の歴史ある街が保存されています。儒学者頼山陽とか、池田勇人、竹鶴政孝(ニッカウイスキー)の出身地でもあります。幅100米、長さ500米の広さのなかに格子のある家、武者窓と呼ばれる2階の窓のある家、漆喰壁の蔵、医師の建てた洋風建築、など被写体には事欠きません。残暑厳しい日の昼下がり、まぶしい太陽に目をしょぼつかせながらシャッターを切りました。あまりのまぶしさに露出が適性に働くのかどうか、ハレーションをおこしてしまうのか心配でした。ピーカンは苦手です。ちょっとした曇りの日が絶好なんですが、今年の9月上旬はことのほか暑くて全国どこを探してもそんな好条件の土地はなかったです。
飲食店は数軒しかなく、むしろ保存されている居住用建物の数のほうが圧倒的に多いところです。 いわく森川邸、松坂邸、竹鶴邸、春風館(重文)など。森川邸で入場料300円払ってあがりこみ、畳の上でしばし涼風を楽しみました。「疲れはいやされましたか?」と切符売り場のおかみさんの声が背中に届きました。いまや歴史的な保存物はどこの国でも注目の的、保存に当たる予算を確保するのに苦労しているようです。しかし、こういう町並みや、歴史建造物が観光の重要なメダマになっているのですから、観光に携わる関係者は「旅行者の知的刺激」のニーズについてもっと学ばなければならないでしょうね。