「ジャッカルの日」とか「オデッサファイル」などの著者 フレデリック フォーサイスが自伝のような本を出版しました。名づけて「アウトサイダー」角川書店 です。副題が「陰謀の中の人生」というもので、彼の人生は、まさに、ジャーナリストでありまたスパイでもあったのです。こういう波乱万丈の人生を送れたのは、本人が望んだにしろ、幸せそのものだったろうなと、想像に余りあるところです。

幼少のころの親の方針で語学教育を受けた結果5か国がしゃべれて、また世界各国を飛び回り、第二次大戦の空の雄、スピットファイアーを操縦して冒険の限りをつくす。よって自分と小説の境界が判然としないのではないかと思います。この小説家は私と同世代の1938年生まれ。若いころに世界大戦に巻き込まれています。

その後アフリカ、ビアフラの独立戦争では大量虐殺を目撃したり、東ドイツでは西側のスパイも引き受けて侵入しています。つまり、ドキドキワクワクの一生だったのです。多くの国で、何やら小難しい官僚の行政とぶつかったり、政治家たちはしらばっくれて、武器を紛争国に輸出して、結果難民を増やしたり、政治家と武器の輸出の癒着もひどいものだったと伝えています。政治家と各省庁の役人はおおむね背信行為をするので信じてはならないという教訓も出てきます。安倍内閣が強行する憲法改正とか、海外派兵も(大義はあるにしろ)政権の強い押しが、ないしは無理押しがあるという見方もできてしまう。けっしてきれいごとではないなと思います。

彼の小説は、したがって、作り物というよりも、失職して苦し紛れに書き始めた真実の紛争の歴史の物語というドキュメントと受け取っていいのでしょう。そうすると、彼のその他の作品である「戦争の犬たち」「アフガンの男」も映画になったりして我々の娯楽に役立ってはいるものの、やはり実話が根拠だったのだと思えるのです。