私もファンドマネジャーの端くれでしたから、スコットランドの首都エジンバラには行ったことがあります。9月19日、金曜日の朝10時、ただ今現在スコットランドが独立できたかはわかりません。あと5-6時間もすれば選挙の結果がわかるでしょう。結果がどうあれ、この独立の運動は私にエジンバラ訪問を思い出させました。

日本の会社でファンドを運用していた時、私は社命でエジンバラを訪問しています。エジンバラは投信のふるさとで100年の歴史があります。その上噂では、資産運用が上手だということです。ロンドンから汽車に乗って降り立った駅の裏側の絶壁の上がエジンバラ城です。私は日本から数人のファンドマネジャーにアポを取っていました。これらのファンドは既に日本株に投資していて、日本には強い興味を持っていました。つまり私はイギリスのことを聞くと同時に逆に彼らに日本事情とか銘柄のことを教えてあげることもできたのです。

まだ若かった自分は、情報や知識を投資信託の本家本元で交換できる機会を得たことを誇りに思ったものです。実際のところ、かの地のファンドマネジャーと市場のこと、企業のことなど、話し合いはしたものの、今ではよく覚えていません。それは記憶に残るほどの充実した会見ではなかったという証拠でしょうか。

覚えているのはもっと雑事で、まあこれも旅の経験ということで、意味はあるかも知れませんが、駅の裏にそびえるエジンバラ城を訪問したことです。お城の天井の壁にギリシャ文字が描かれていたのです。これぞ有名な「苦難を通して星の高きへ」という格言で、イギリス空軍のモットーだったのです。かの有名な「ロンドンの空戦」の背景にドイツ空軍と渡り合ったイギリス空軍の苦難の歴史を支えるバックボーンだったのです。きっと、聖書の中から引用したに違いないと思いました。

その日の昼、あるファンドマネジャーが食事に誘ってくれました。ステーキを注文することになったが、出てきたステーキがウエルダンでした。私はいつもの癖でミデイアムと注文したのですがシェフに知らんふりをされたのでしょうね。かのファンドマネジャーはわたしの代わりに怒って、料理人を呼びつけて「失礼だぞ」と叱責したのです。スコットランド人の料理人は私が東洋人なので、いたずらをしたのだろうと思いました。私はしばらくあとで半生焼きのステーキを食べる羽目になった。本当はミデイアムでよかったのに、と心の中でつぶやいた私でした。