まあ、いっしゅの読後感ですが、私が気になった、というか、気に入った個所を取り上げてみました。岡本さんも林望さんも博識でいろいろな意見ももっておられるので、とても勉強になります。
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―振り込め詐欺は「普段子供とコミュニケイションができていない」ということですが「自分の子供を信頼していない」とも言える。信頼していれば私の子供がそんな間違いを犯すはずがないときっぱり言い切れるのでしょうね。
―貨幣経済は都市経済のもので、商人はお金儲けに精を出したが、武士はお金は汚いものとして高潔な武士ほどお金にはかかわらないという時代。今でもその価値観が残っていてお金は汚い、お金持ちは悪人というイメージがある。江戸時代の価値観を引きずっている日本人です。
―アメリカのある会社のマネー教材に子豚の貯金箱のお金を出すところの足に名前がついている。何に使うのかというステッカーがはれる。スペンド(使う)がハンバーガー、セイブ(ためる)が自転車、ドネイト(ゆずる)がギフトボックス、そしてインベスト(増やす)が学帽、という風に子供が手持ちのお金を目的別にためるということを学べます。これぞ幼児教育。
―投資家に教えているのは「株主になって配当をもらったら、お礼の手紙を社長に出そう」という運動をしている。これは面白いですね。もしこの手紙の返事が来たら、その社長のガバナンス指数はかなり高いと踏んでいいでしょう。でも個人投資家を疎んじる経営者がおおいので、たぶん返信率は5%程度ではないかと思います。しかも本人直筆となると1%程度と下がるでしょう。
―60歳すぎたら減蓄ということを提唱しているのです。減蓄っていうのは「貯める」の反対ですからある程度年を取ってからの美学ですね。しかも大事なものから捨ててゆく。そうして死ぬときはほぼ何もない、どうでもいいものしか残っていないというのがいい。年を取って増やすことに執着している人はこういう真逆の思想をどうとらえるのか興味あります。この本は誰もが独立した人間でなければならないと主張しているようでもあります。
―最後に、“わたしと意見を異にしたところですが”、お二人は鎖国を多としています(つまり有意義だったと)。私は日本の270年余の鎖国が日本の近代化を阻んだと思っています。もしこの間、西洋やほかの地域と交流や交易があったならば、今の日本のように孤立しないで済んだかもしれない。「日本の常識は世界の非常識」と自虐的に言わないで済んだかもしれないと思っています。コミュニケイションの断絶は国家の危機です。鎖国時代にインターネットがあったら、鎖国は成立しなかったんですね。笑