富山からか選ってきてまだ数日、いまだ記憶が鮮明なうちに思い出を記しておきたいと思いました。私の認識不足で、北陸の都市が今多くの変化を前にかたずをのんで未来を見つめていることは気づきませんでした。多分、東京の人はほとんどおなじ感覚でしょう。

富山、高岡そしてたぶん金沢は2015年の北陸新幹線開通を前に生みのつらさを味わっていると思います。なんといっても行政の区画が変わります、それに新幹線の駅の立地によっては繁盛する側と衰退する側がはっきりしてきます。地元の商人にとっては死活問題でもあるわけです。

そこのところは、さておいて旅人としての私は、この混乱の中に会って、伝統的な文化を味わってきました。

新幹線を待つ: 高岡では山町筋、金屋町と呼ぶ二つの通りに昔の問屋街を残しています。そこは万葉線の通り道でもあります。北陸銀行、道具屋、海産物の問屋、などが並んでいて、訪問する人は、今は使われていない町のそぞろ歩きを楽しみます。ところどころに店を開けていることもあります。駅の北側(日本海側)にある問屋は駅の南側に引越しして区画整理を進めたようです。わらび餅を売る大野屋という菓子屋は残っていて170年ののれんを守ります。駅の近くは建築中で、空高く鉄骨とコンクリが露出していて、商店街はもうシャッター街化しています。あと2年の我慢で新しい駅前が誕生するのでしょう。

富山駅も同様改築中で、周りはプレハブだらけ、駅の南側から北側に抜けるのに、500メートル歩きます。旅の人には不便この上ない状況ですが、やはり北陸新幹線の駅が開設したら、、、期待は大きいのではないでしょうか。あと2年、富山駅がどのように変わるのでしょうか、それは見ものですね。

モダンなトラム: 富山は、北陸地方の都市の典型ともいえる古くて、モノトーンの印象の町ですが、その町を縦横に走る市街電車は新しくてモダンです。町並みと電車のコントラストが何ともおかしいのです。いや、間違いました。電車の通過する通りはすでにモダン住宅が並んでいます。高岡の万葉線は真っ赤な色で、富山のライトレイルは黄色とみどり、ですからデザインは斬新。どうやら外国の車両を使っているらしいのです。富山北駅発のライトレイルもモダンで格好いいのです。道路がすいているとゴーという音を立てて速く走ります。乗車券の扱いも合理的で訪問者でもすぐにコツを飲み込めます。一方立山地鉄のような古い鉄道は昔の儘で、それも郷愁を呼びます。

ここにも北前船:どうやら北陸地方の行政サイドは古き良きものを文化遺産として残して、観光の役に立てようと決めたらしいのです。富山北駅からトラムで24分、そこは岩瀬港で、周辺の町並みとか灯台が保存されています。多くのお屋敷は、かつて北前船で大もうけした船問屋というところでしょうか。食堂が一軒、喫茶店が2軒、あとは数件の仕事屋、そして栄華を夢見た時代を思わせる立派な家が0.5キロも続いています。私も外国人、熟年の旅行者に交じってカメラ散歩をしました。静かで清潔な町並みでした。

水のおいしさ:富山は立山連峰に守られている街です。5月でも雄山や剣岳あたりの3000米の山岳は雪で真っ白です。北は日本海、南はアルプスなので、この盆地は本当に自然には恵まれています。コーヒーを飲みますとあまりのまろやかさについカップの最後まで飲んでしまいます。その前にお水を飲んでくださいと言われました。これも文化だなー。町のあちこちに小幅な流れがあって豊富な水が流れています。大きな常願寺川、神通川は広い川幅、水が豊かでゆっくり流れています。水の流れが大好きな私は、いやー、“癒されるなー”とつくづく感心しました。多摩川のほとりに住む私は、とうとうと流れる富山の川には一本取られたという気持ちです。

伝統の保存:富山は前田のお殿様の影響は受けています。前田利長が高岡に城をかまえてすでに400年ですが、前田の代々の殿様はよほど遊興が好きらしく、城下町では町人が幅を利かせ、建物、陶磁器、お菓子、踊りなどの文化が根付いています。色町もありました。前田の殿様は戦よりも遊びが良かったのかな。また現在の政治、行政でも昔の遺産や伝統を守ったりしているので、古いものを大切にする気風があるのでしょう。私のような訪問者にはありがたい習慣です。古いものと新しいものが共存する北陸ですが、これも変幻する時代を生きる知恵なのでしょうね。