私の友人に岡本和久さんがいます。岡本さんは、目を見張る経歴をお持ちで、投資の世界では学識経験もありかつ、運用にも強い方です。I-OWA という投資グループをまとめて、勉強会をしています。たまたま12月の例会に出席させていただきますが、そのテーマが「東インド会社」だそうです。
私はこの数年間、日本企業のガバナンスが弱いという事実に大いなる疑問と失望を感じていました。日本企業は資本主義の原点に立ち返って資本と経営を考え直さないといけない。そうしないと厳しい国際競争に負けてしまう、とあせっていたのです。そこでよくよく考えたのが、東インド会社のこと、南極大陸探検のスコットのこと、登山家マロリーのことでした。
いずれも1600年から1800年にかけて、お金を出す人々がいて、かつそれを活用する人がいて、そして果実を皆に分配した、という共通点があるのです。それこそ資本主義、株式会社の原点になるものと思っていました。東インド会社はオランダ、イギリスのほかデンマーク、スコットランドにもあったようです。1601年当時の強国オランダが設立して、インドやアジア諸国から胡椒とか、ナツメグ、丁子、シナモン、さらにはキャラコ(綿製品)などのスパイスを輸入しました。南の国のスパイスは北の国にとっては非常に貴重な商品で、オランダは強引なやり方で、現地を植民地化したのです。
しかし、私が原点と思うところは、数百人の資本家が出資して、そのお金で、船を買い、船乗りを雇い、一か月もかけて、インドなどへ買い付けに行った商人がいたのです。これぞ資本と経営の分離です。資本家の配当の受けとり分は当時は年40%にも達していて、非常に人気のある交易だったそうです。最初は合本会社として一回の航海ですべて清算していたようですが、その後資本を留保して継続して航海ができるように制度を切り替えたのです。東インド会社制度は取締役を選任したり、委員会という集団で事業をすすめたり、総会を開いたり、株式を売買したり、まさに今の株式会社の原点そのものです。
スコットもマロリーも資金集めには苦労して、冒険の成功の暁には、講演会を開いたり、本を出版したりして、その上エリザベス女王に褒めてもらったりして、収入を得て資本家に借金の返済をしていました。ただスコットは南極大陸からの帰途に遭難してしまいました。つまり、「わたしお金出す人、きみ働く人」ということです。今、わが国の経営者はほとんどが、資本家ではありません。自社株保有も微々たるもの。ですから原点に返って、資本家(今はあいまいな存在ですが、もしそういう人がいるならば)に敬意を表して、その人たちのために働くというポリシーをはっきり持つことが、求められているように思っています。つまりガバナンスを効かすということでしょうか。ただ、稀にオーナー経営者がいますが、資本を出して、口も出すという、ソフトバンクやサムソン電子みたいに「資本と経営の合致」する企業は弱みを見せず、相変わらず強いのですね。