上村騎手が2月23日をもって騎手生活にピリオドを打つそうです。あまり有名でもなく、有力でもない騎手でしたが(生涯の騎乗数7850回、勝率0.072%)、私はその最後となる週末の22日(土)と23日(日)の上村騎手の騎乗機会に目を付けました。そして注意深く上村騎手の2日間の騎乗を追いかけたのです。私の仮説は、競馬界は農林省管轄時代から古い因習の残っている世界で、きっと何かが起こるに違いないというものでした。

あにはからんや、普段は一日に1-2レースくらいしか乗らない上村騎手は、京都競馬場で22日の土曜には6鞍、23日の日曜も6鞍に乗りました。まさに異例です。これでもう私の仮説は成り立っていました。つまり厩舎や馬主がおわかれのお餞別として上村騎手に勝利の花を持たせることにしたのです。騎乗の半分以上はいわゆる「乗り替わり」で、前のレースまでは他の騎手が乗っていて、最後の週に、厩舎、調教師、馬主は上村騎手に

はなむけの騎乗を提供したわけです。

23日の朝からそのことに気付いた私は、5レース目にその日の初めての騎乗をしてから12レースが終わるまで、成り行きをウオッチしていました。そして京都の6レース、アドマイヤヤングという新馬に乗ってきました。無論新馬ですから、だれもが初騎乗ですが。私は本命になったこの馬から有力な馬に2点だけ連勝馬券を買ってみました。結果は、この馬で上村騎手は5馬身も2着の馬を離して強い逃げ方で勝ました。実は強い馬にたまたま乗ったのか、誰かから強い馬を回してもらったのかは私はわかりません。

さらに上村騎手を追いかけていると、今度は9レース、木津川特別1000万下条件で、ほとんど人気のないニシノカチヅクシという馬に乗ってきました。ほかに有力馬が何頭もいるので、まさか、この馬では勝ちきれまいと思ってみていましたら、なんと、1着になってしまいました。有名な馬主の西川さんが温情で乗せてくれたに違いないとひとり合点しました。単勝が39倍もつきました。馬連が4440円です。「あれつ、やっぱりそうか」とここで初めて確信に至ったわけです。この馬は成績が悪く2-2-0-22でしたから、そうは簡単には勝てない馬なのです。芝の1600米というプログラムでは一回も勝っていません。

それに、新聞に載る厩舎側の発言もけっして強気のものではありませんでした。最後の京都12レースでは完全無印の馬で走り当然着外でした。かくして、騎手人生の最後の日に2勝できた上村騎手は、多くの関係者の温かい声援、応援に送られて、長い騎手人生を終えたのですね。おめでとうございます。え?私はその9レースは(あまりわざとらしい振る舞いが嫌いなので)馬券は買っていませんでした。いえいえ、敗けおしみではありません。