都内でも有数の散歩コースが谷根千「やねせん=谷中―根津―千駄木」で、写真を撮る趣味のあるの人たちには毎度おなじみです。6月末のある蒸し暑い日、私は多摩急行を使って、根津駅に降り立ったのです。まず、最近手に入れたガイドブックを開いてから根津神社に向かいました。

神社に届く前に教会があるのですが、私はうっかりして一本道を違えて通り過ぎてしまいました。いったいなんのためにこのあたりに来たのか。しかし、神社の方は実に立派で、江戸時代の神社の建築としては最大規模を誇るそうです。神社に付きまとう来歴どおり、ヤマトタケルノミコトが創建したということですが、徳川綱吉公が造営したことは確かだそうです。秩父の寺社を回った時もそうでしたが、関東の寺社はたいていは徳川の時代の遺物で、ここもお金持ち大名の遺産そのもので豪華です。

あまりにも立派で、開いた口がふさがらない経験をしたのは、知人がお世話になったという日大医科大の千駄木校舎を通りぬけたこと。そのあとは、ヒマラヤスギのあるコーナーと言うか、街角まではだらだら歩きで、そこからはいわゆる谷中のお寺さんがぞろぞろ。古書の店の構えに感心しながら通り過ぎたり、長久院という寺の門前のアジサイに写欲をそそられたりしながら、蕎麦屋に入る。こういう散歩では蕎麦屋に入るのがまるで、しきたりのような気がしてくるのは環境に影響された証拠でしょうね。ここはざるそば以外に何を食べる、と独り言。

まるで周囲の高い木立とは釣り合わない、台東区の谷中分室の前を通り抜けて、三崎坂(さんさきさか)をゆっくり下って、140年の歴史ある「菊見せんべい店」でせんべいを買ってから、もはや今日の元気をすっかり使い果たしたような疲労感もあって、谷中商店街を歩くのは次回と決めて、千駄木駅で千代田線を捕まえて、帰路につきました。撮った写真は30枚くらい。傑作は?? 言うまでもなく、ありませんでした。ただお寺さんを囲む長塀には歴史を感じたものがありましたが。