NHKの小さな旅という番組で、私は少しもらい泣きをしました。自律神経の権威、順天堂大医学部教授、小林弘幸先生は(人は泣くことでストレスが解消されて、バランスをたもつことができる)と時たまの涙を進めているくらいです。わたくしは小林先生のファンなのでそのあたりはよく心得ているつもりです。そうかといって自ら買って出て「お涙ちょうだい」はしませんが。多くの人は自立神経が乱れて、(つまり交感神経と副交感神経のバランスを崩したりして)日常生活を苦しくします。

この小さな旅番組では、父親と10歳になる娘が四国の石鎚山に毎年登ることがテーマになっています。なぜかというと、その女の子がうまれた時に母親は無くなってしまったのです。いわゆる産後の肥立ちという不幸でしょうか。父親は生前に妻とこの山に一緒に登っていたそうです。父親はこの収録の日、山道で休憩しているとき、「何故、お父さんが娘と石鎚山に登ることになったか」のいきさつを娘にお話ししました。

母親を見たこともない、また何も覚えてすらいない女の子には過酷な時間が過ぎました。女の子はじーっとして、父親の説明を聞いていました。似たような経験を持つ私は、涙が止まりませんでした。この子はどんなに母親に会いたいだろうか、合えない運命の母親はどんな人だったのだろうか、と思いをはせているのが手に取るようにわかりました。私はただお気の毒にと同情するだけでは気がおさまらない、感情に支配されていました。そして小林先生を思い出して、私の涙は自律神経を整えるために神様が与えてくれた機会なんだろうと判断しました。

イライラしたり、神経をとがらしたり、不安で寝不足になったりした時、先生は「日記を書いたり、お掃除をしたり、片づけものをしたり、ゆっくり歩いたり」してバランスを取るようにしなさいと教えています。時には映画を見て涙を流すのも、知恵なんですね。