ブームに乗って記事を書くのは少々恥かしいのですが、やはりあまりにも大きなエネルギーというか、パワーというか、世界政治経済秩序に与えるインパクトが大きくて無視できないのです。シェールガスというのは天然ガスのことですが、眠っている場所が地下の1000米以上深いところで、始末の悪いことには岩盤にかこまれていたり、岩にしみこんだりしていて掘削にひと苦労するわけです。最近その岩盤に高圧で化学水を吹き込むことによって、砂だらけの石油を押し出す技術が開発されました。

その石油を精製して、ガス化して輸出したり、また現地で発電したり、アメリカ、ブラジルのような生産国はいま国中が沸いています。私たち日本と違って、資源の生産国はインパクトの受け止め方が違うのですね。そこで、今までいろいろ言われてきた、インパクトについて一条書きにしてみました。それでは不十分でしょう。もっと深堀するべきでしょう。それは別の機会で。

まず (1)ニューフロンテイアとしての価値、雇用創造です。失業率は大幅に下がるはずです。(2)今資源の輸入国のアメリカは、3年もたてば輸出国になりそうです。(3)ヨーロッパと日本はガスを買う方の立場ですから、競ってエネルギー源を天然ガスに転換するでしょう。(4)アメリカの相対的国力は上がり、ドルは強くなるはずです。(5)今ヨーロッパは現地価格の(市況の)5倍で、日本は8倍の価格で天然ガスを買っていますが、少しは下がるでしょう。

しかし日本が原発をオール止めてしまったら、足元を見られて買い付けには不利になります。政治家にはしっかりしてもらいたいと思います。原発は、エネルギービジネスにおいてもコスト構造からみて重要なカードになっているのです。ここまで書いてきて、思うに、日本ははたして今回のエネルギー革命(天然ガス黄金時代=2酸化ガスの発生を抑える効果、エネルギーコストを下げる効果)の恩恵をどれだけ受けられるか、はなはだ心もとないということなのです。原発事故が原因で、いまや思考停止状態の日本は、最もこの恩恵を受けにくい国の一つになるとビジネスウイークのC.リッキーという編集委員は述べています。天然ガスの方が原発よりもコストは高いのですが、ベストミックス(限られた資源を前提に、最も理想的なエネルギーの使い方の組み合わせ)を考える場合、天然ガスのウエイトが大幅に増えることは大賛成です。

いま選挙キャンペーンで脱原発を叫ぶ候補者が多いのですが、ことは単純ではないのです。政治家は日本という国を広い視野、グローバルな視点でもって(Japans Interest)を考えて、政治家らしい発想を持ってもらいたいと願います。それが政治家の役目であって、大衆におもねるようなちまちましたプレゼントキャンペーンなど降ろしてもらいたいものですが、はたして、その期待に応える資質の政治家はいらっしゃるのでしょうか。政治家って誰でもできるような候補者の擁立の仕方ですが、実は誰にも簡単にはできない大きな仕事なのでね。