アベノミクスの成功によって景色が変わりました。数十年に一度のレジームチェンジです(体制の変換)。私はファンドマネジャーの立場として、いわゆる「ポジショントーク」はひつようありませんので、ここからは目に嫌なはなしになります。よって多くの楽観的な方々には、読まないでパスすることをおすすめします。

デフレからインフレへの転換は成功しました。今やなんでも値上がりするが、それもよしという時代になりました。デフレとは、物価、金利、株価の下落と言えば、ではリフレ/インフレは 株価の値上がり、物価の値上がり、金利の上昇、その3点が上がるということです。今の日本は、思い出すとサプライサイドエコノミーを導入した1980年のレーガノミクスの時も同じような反応がありました。ムードは良くなっていますので、まるでいちゃもん付けるような記事は歓迎されませんが、FT紙も最近取り上げたように、あとは改革だ、という意見が当を得ています。

さて金利は下がっても実弾があふれてこないと設備投資は伸びませんし、制度さえよければ消費税はニュートラルと思っている私には心配はないですが、5%から8%への消費税増税は消費者心理に重くのしかかっていす。政府の矢継ぎ早の制度変更(例:雇用転職調整、贈与税の特典、沖縄問題の前進、賃上げ説得など)を見るとさすがに実行力があると安倍内閣を評価せざるを得ませんが、いまだ手を付けていない成長戦略はどうなるのでしょうか。人口減傾向から抜けられない日本、投資は海外でと逃避する企業資金、デフレ時代にため込んだ自己資金を吐き出さない企業、自己保存力の強い官僚をどう動かすのか、競争を勧めて優勝劣敗の気風を導入できるかセーフテイネット構築をおろそかにして、弱者救済ばかりする政治、いくつもの疑問が頭をよぎります。

成長こそがソリューションと固く信じて疑わないファンドマネジャー達は日本経済と産業、そして個々の企業が再成長を図ることを強く願っています。外国投資家が今や株式市場の主役になりかわっていますが、彼らについて私はよく知るところでもありますが、日本企業のガバナンスの弱さ、無頓着、否定的態度などを見るにつけリスクを取れない外国投資家は「投資期間は短期に偏って」いわゆるイベント投資になっています。「いまは長期投資ができる環境ではない」と言われそうですが、ガバナンスが徹底して(たとえ成長率が低くても)持続的成長があれば長期投資をした方が有利なのは間違いないのですが、やれ資源だ、やれ為替だ、やれユーロ危機だと、トピックスに乗じて投資するのは、日本が長期的には改革が成功するとはいまだ半信半疑の投資家ばかりだからでしょう。アベノミクスは出だしは大成功、しかし道半ばですが、成長力を取り戻す政策(例:フランスのような少子高齢を脱するための法整備とか道州制導入とか)が実施されれば、強気相場というのは長く続くはずです。こういう時にはアメリカ人などは ”Will see” とうのですが, さしずめ 「どうなるか様子見てみよう」というような意味です。