かつてはトステム、そして今LIXIL、途中でINAXを併合していて、住生活グループでもありました。その間長い間トップとして君臨していたのが潮田氏。私が現役のころは、少なからず障壁があってどうしても投資できなかった銘柄です。その会社に、いま画期的な、大きな変化が起こりました。それは新しい人材の登用です。

よく言われますが、会社が変革する動機の一つにトップの交代というのがあります。あのワンマンのように見えた潮田氏、社長や会長を歴任して指導者としてグループに出たり入ったりしてきたのですが、どうして今回創業者たる潮田氏が後ろに引き下がったのでしょうか。すでにこの数年間、海外で大型買収を手掛けてきましたが、私の印象は、国内産業の代表でもある住宅関連事業の住生活グループがなぜ海外に手を広げ始めたのか、不思議だというものでものでした。

多分潮田氏が国内の成長に限界を見て、海外に事業の発展の必然性を理解したのでしょう。そしてその野望を実行するために海外の有力企業の足跡をなぞるというポリシーを立てて、プロクシー(見本)としてGEで活躍した藤森氏に白羽の矢を立てたのですね。藤森氏を登用することで、GE流のやり方、つまり「M&Aをしながら成長する」という道を実現できると思ったわけです。藤森氏はまさに肌身にGE流の経営哲学、実践を身に付けたピンチヒッターとなって打席に立ったというわけです。

電機や機械、製薬、食品業界には世界的な規模のM&Aで新しい成長、商機を手に入れる日本企業があります。住宅関係でもLIXILが初めてそのあとをついで世界規模の企業になるときが来たというわけです。ただトステム時代からのこのグループの低収益性、ガバナンス不足は機関投資家のよく知るところで、その実態がどのように国際水準に近づけられるかが投資機会を狙っている内外機関投資家の一致する注目点というところでしょう。

私流に言わせれば、本当に潮田氏が経営のかじ取り、権限をCEOの藤森氏任せられるかというところがLIXILのこれからの発展のカギとなるのです。私にとっては藤森氏はいわゆる「時の人」です。