バフェット氏が日本の商社株を買うというニュースが流れた。8月31日の商社株は軒並み100円以上も上昇した。商社株の評価についてながいあいだ苦労してきたわたくしは、おや? そんなに喜んで大丈夫かなといぶかった。何がわからなかったかといってこの業界は特別で、日本の商社株の株価とか企業価値の、普通の会社並みに考えても、妥当な水準について「このあたりが妥当だ」といえず、自分に自信がなかったからである。まずこのニュースを好材料ととらえるなら、なんといっても1)数かずの議論を経て株価があるべき所に落ち着くだろう、2)著名な投資家がいくら払うかによって、保有株の評価が定まりそうだ、そして日本の商社株はアンダーヴァリューだという評判が立ち、また3)投資家には理解できなかった、商社の事業内容があきらかになる、など想定される。

一方で、1)戦前戦後の財閥時代以来の横並び経営の鼎の軽重が問われる、2)現在の経営者のESGがあからさまに俎上にがる、と同時に、投資家軽視の体質についてもメスがはいるだろう、3)経営能力次第だが、経営者の交代とかM&Aについての株主発言が遠慮なく入る、4)グループの持ち株関係について批判が増える(三菱グループが三菱自動車にテコ入れしたような例に対する批判とか)

ともあれ、バフェット氏は「理解できない会社の株は買わない主義」だそうだが、今回の日本株買いは、真に理解できたのか、きまぐれか、ほかに選択肢がなかったためにそういうことになったか、いずれ時間が証明してくれるだろう。ベンジャミングラハムの遺志を継ぎ、年間200冊のアニュアルレポートに目を通す投資家が、味方になった かと早合点はするべきではない。