時間のない人とか、もう四国八十八か所をめぐってきたひとなどに、高幡不動尊はアジサイを配して、ミニ八十八か所散歩みちを用意してある。言い方を変えれば、億劫な人向けの八十八か所である。今週テレビで紹介したので、混むに違いないと踏んで土曜の午前中に少しあわててでかけた。

場所は高幡不動の裏山にあって、誰かが後ろのほうで、「鎌倉の山よりも楽よね」と言っている。ほぼ一時間1から88までの番号が振ってある小さなお地蔵さんを巡ると、元の入り口の近くに出る。ただアジサイの季節は気温が上がっていて、かつ蒸しているので、間違いなく汗をかく。タオルとか水は必需品と言っていい。

各お地蔵さんには番号があって、戸籍みたいに四国の住所が分かるようになっている。その道の達人にはさぞかしありがたいのではないか。スニーカーを穿いていた私は、ふと思った。雨が降ったらこれはまずいぞ。ぬかるんで、坂道でしりもちを突くに違いないと。ま、それでも、ご利益はあるだろうから、騒ぐことではないか。

雨が降らないので、アジサイも今一つ精彩がないが、まあ、大量の株が我々を圧倒する。ついカメラを出して撮りたくなるほど見事な出来だ。京王線の高幡不動駅の周辺に「そばや」「おでんや」「すしや」「せんべいや」「土産物屋」「喫茶店」「ファミリーレストラン」など、柴又ほどではないが、いちおうはそろっているので、始発電車に乗る前に一杯やるのも一興ではないかと近所に住む私は気配りしてしまうのである。