私の実感では、山梨県北杜市の清里はもはやゴーストタウンで、もはや再生もならずという悲しい状況です。北海道にクラーク博士が君臨しているように、清里にはポール・ラッシュ先生が「自然との共存」という教訓を残してくれていました。先生は昭和9年に立教大学で教鞭をとられていて、日本にアメリカンフットボールを輸入された偉人です。

そして、清里には清泉寮があり、先生の「意思」が綿々と世帯を超えて伝えれてきました。「青年よ大志を抱け」がクラーク博士の教訓とすれば、「最善を尽くせ、しかも一流であれ」というモットーがラッシュ先生の誇りです。地元の若い人たちがその哲学を背に立ちあがって、いわゆる「萌木の村」を発足させたのです。ここまでは私が15年ほど前に学んだことです。

そして昨年、萌木の村のシンボルだったレストランの「ロック」が火災で全焼しました。私は なぜ?誰が?とまずは犯人捜しに関心を持ちましたが、応えてくれる人はありません。暖炉があって、メニューが新鮮で(温めたプレッツェルとか、地ビールとか、地産地消のソーセージとか)一人で行ったり、また親せきの人などと10人ほどで押しかけたこともありました。昨年はレストラン再建のための資金集めが行われ、今年に入ってようやく新装なった「ロック」は開店しました。ますます大きくなって、また席の数も増えて。

萌木の村は健在ですが、ポール・ラッシュ先生の夢をかなえた原動力の清里文化はもはや死んだも同然。なんと言いますか、「豊饒な畑をバッタが根こそぎ食い散らかした」とでも言えますか。バブルの跡は、実に悲惨な状況です。ひとつ、嬉しいことは、ロックの社長はまだ希望を捨ててはいません。清里の再建に精力をつぎ込んでいます。清里を第二の夕張にしないために、私は何ができるのでしょうか。