という噂が飛び出ている。私はキャリア時代にはシュルツ氏のファンだった。世界でも尊敬する経営者の筆頭にあげていた。バフェットを尊敬したり、畏敬したりする人は多いが、スタバという世界的な広がりを持つコーヒーショップの経営者として尊敬すると、公然と主張する人は少ないだろう。なんといっても、英雄とはビルゲイツであり、またジェフベソスであり、ティムクックなのだ。

私は、拙著の「ファンドマネジャーを知りたいあなたに」(2012年刊)の中で、シュルツ氏を礼賛している。特に母親との会話のエピソードには強く心打たれているのだ。ともあれ、彼はどのような政治的立場にいるのだろうか。私の類推するには、彼のスタンスはまず「反トランプ」だろう。彼はトランプ政権が強引に作り出す、恫喝、混乱、攻撃、変革のスタンスを好まず、アメリカの現状を心より憂いているのだ。シュルツは良心的な、心やさしい人間なので、荒々しい政治の争いを好まない。そうかといって彼は民主党にも属さないのだ。元スターバックスの会長兼CEOだったシュルツは引退してから、どうやって現在政治の混乱を静めるために役立つことはないか模索してきたと思える。

私は、大統領の選挙に独立派として彼が有力とは思えない。到底当選できるとも考えない。アメリカ社会はそんなに甘くないとは思う。しかし、彼はきっと大統領になれなくても、選挙のキャンペーンがアメリカ社会に少なからず影響を及ぼすと信じているのだろう。成功した経営者が自分の世界観を社会のために自薦したいと思うのは至極当然のこと。しかもシュルツ氏はその資格はある。

自分の言葉に酔ってシュルツ氏を礼賛する気はないが、経営者を観察して企業の価値を想定するキャピタルグループ伝統の価値判断を遺伝的に身に着けている私は、ユニクロやソニーや、ソフトバンクのトップを評価するよりも、シュルツ氏に親しみと尊敬の念を持つのは事実である。いま AIの導入が盛んで、投資の世界でも情報の数値化が主流になりつつある。しかし、古臭いいいようではあるが、私の好き嫌いの感情を押さえてまでAIに依存しようとは思わない。何しろ人間の好き嫌いは、すでに、脳の中で、いや、ハートの中で、数値化する以前段階での価値は吟味されているからである。

わたしの企業価値へのアプローチは、その点では軽薄なマスコミとは鋭く対立していると思っている。