長い間課題であった、認知症の一部アルツハイマー症に光が当たった。従来はエーザイ社の「アリセプト」のみがアルツハイマーの治療薬だったが、実際は患者の症状の改善はできないで、ただ悪化を防ぐことだけの効果しか出せなかった。効果的治療薬、改善薬を発見することが業界の長年の夢でもあった。今までは、胃潰瘍とか高血圧などの大型薬品が世界で売れに売れたが、これからはがんの薬が大型薬の代名詞になるような気がする。

それが実現したことは、発表以来2日でエーザイ株(7700円>10000円)、バイオジェン株(280ドル>400ドル)の毎日のストップ高が人気を、また期待を物語っている。世間は認知症とはアルツハイマー型と決めつけているようだが、実は認知症には4つの型がある。アルツハイマー、レビー小体型、脳血管型、そして前頭側頭型である。私は6,7年前に稲城市立病院にて、「認知症外来」のお世話になった。当時あまりにも物忘れがひどくて、病院に駆け込むほどに、私はショックを受けたわけだ。

いろいろな検査の結果、私は認知症ではなく、いまだ病名をもらうほどの症状でもなさそうとの先生のご宣託ではあったが、例のテストが27点(30点満点中)とはかばかしくはなかった。「脳の血流を調べると、あなたは認知症ではないが、もしそうなれば、アルツハイマーではなく、レビー小体型になる」と診断され、「ところで、最近幻想を見ませんか?」と、リビー小体型の特色に迫ってきた。

実はそのころ私は、夢と言うか幻というか、おかしな人たちの姿を目の前に見ている。夢とも言い切れなくまるで本物みたい。その人たちは芸能人が多く、テレビのコマーシャル画面そのものであった。目の前の「スズキ自動車の車宣伝」の若き女性たちが騒いでいる。ふと気が付くと、その映像は目の前から消えている。これぞまさしく先生が言われた幻想ではないか。これはまずいことになったなー、と不安になり、しばらく時間を置くといつの間にか映像は消えていた。ただ実際には苦痛はなくただただ芸能人が目の前に現れては演技するだけだった。いつの間にかその幻想も出なくなり普通の日常が戻ってきたのだが、今振り返ると、私もついに「認知症の世界に触れていた」のだな、と感慨深い。