安曇野を逍遥しました。カメラ片手に友人のK氏もいっしょでした。大糸線の豊科あたりを左折して、車の車輪の向くまま、まっすぐに常念岳のふもとへ向かいました。そうですね、久しぶりに安曇野をうろうろして、景色や風物(リンゴ畑とか道祖神とか、旧家や北アルプスとか)を撮ろうというわけです。そのあたりは、堀金烏川と言って安曇野のほぼ真ん中に位置します。

K氏が車をのろのろと運転して、わたしが助手席できょろきょろと撮影スポット探しをします。かつて何回も訪れていた土地ですが、知らないことばかりですから、何かと新鮮です。その道がつきあたるあたりに、ある造成中の区画にでます。そこには一見立派なお寺と境内、それに若葉をたくさん付けた大木がありました。てっきりお寺さんだと思って、外部から撮影開始。すっきりとした白と黒のツートンカラーの塀、緑の木々、古き姿の境内、感嘆しながらシャッターを押しましたが、勢い余って400円を支払って、かやぶきの屋敷の中へ。

大庄屋(豪農)の山口家とは? 案内を乞うと「300年の歴史ある、大庄屋です」と年配の女性が説明をしてくれました。室内に飾ってある10点ほどの日本画に目を引かれました。そうですね、私もトシですね。昔は見向きもしなかった、日本画を今では少々愛でるようになったのですから。額縁の中の、野鳥や草原、そして自宅のお庭、それらが静かに(当たり前ですが)展示されているのです。よくよく聞いてみると驚きました。2代目の山口蒼輪は大正2年生まれ、昭和5年ごろ ”画壇の麒麟児、天才少年画家“と、37歳の夭逝まで、もてはやされたそうです。京都のような国宝級の美術品、庭園ではないので、保存にはどうやら国の補助金は出ないらしいですね。自費で庭園とか美術品をメンテしているのは大変です。

北アルプスを紹介したかのウオルターウエストンが休まれたという部屋で休み、県文化財の“歴史に残る“ 名園、日本庭園を眺めて、その方としばし歓談しました。カメラ片手に旅をしていると、こういう出会いがあるのかと、嬉しくなりました。ここは安曇野の中の、知られざる一角です。ぜひ一度ご訪問することお勧めします。