東神奈川駅に降りて、海に向かって歩くとすぐに、横浜港の中の小さな運河に出会います。ここのところの寒波襲来で永楓会の実習にはわずか5人しか参加しませんでした。先生を入れると6人、そのうち4人がデジカメ派です。私はこの2年間ほど悩んだ挙句、再びフイルムに戻りました。いくつかの理由がありますが、一つには(1)あまりにも長い年月フイルムに慣れ親しんでいること、また(2)デジカメは操作性が良くて、写したものがプリントしたらオリジナルと変わった作品になっていることが困る、(3)自分がローテク人間でデジカメの操作ができない、などの理由でなかなかデジカメに入れないのです。

よくデジカメの経済性を言う人がいますが、いろいろ聞いてみるとコストはあまり変わらないようです。シャッターを切る数ではデジカメはが圧倒的に多くて、一方、フイルムは一発づつの勝負です。デジカメは暗いところでもよく写ります。ISOを800とか2000とかに設定すればいいのですが、フイルムはASAが100とか400に決まっていて撮影条件が悪くなるとお手上げです。

私は見たままに撮れればそれでいいという信条のもとに、コダックのE100VSをペンタックスMZ-3に入れて運河に望みました。細くて小さな運河が縦横に伸びていますが、想像していたよりも水はきれいで、橋から覗くと底の石も見えます。水鳥が数羽のんびりと泳いでいます。また漁船、ボートが係留されていますが、日曜のためか誰一人船を動かす人はいません。生活の息吹もかすかな、でも静かな横浜港の午後でした。

どんよりと曇った天気。あたりは倉庫と船会社のみで、実に殺風景です。しかし、その条件がいい写真が取れる予感につながります。時々JRの貨物列車が走り抜けますが、貨物専用の線路らしく、電気機関車も金剛力士のようなそぶりです。きりりと冷たい風が吹き抜けて、思わず身震いします。たった一軒のコンビニエンスストアーでコーヒーを自分で入れて寒さをしのぎました。130円でコーヒーの機械を使うあれです。はるか右の空には横浜のみなとみらいのランドマークタワーが見えます。海に出られれば東京湾から横浜にかけて広い視界を得るのですが、伸びていた道が米軍の港湾施設だったので、誰何(すいか)されるのも嫌なので、引き返しました。周辺の高層ビルに火が灯もれば、とてもいい被写体になると思いましたが、15時を過ぎると、もうあたりが暗くなって、17時まで待てば石原裕次郎も遊びに来たという伝説のバー「Star Dust」にネオンが入ると聞いていましたが、それまでは待つ忍耐力はありませんでした。